9) 運動ニューロン障害, パーキンソニズム, 認知症を呈した, 孤発性4-repeat tauopathyの1剖検例

【症例】 64歳男性. 家族歴なし. 59歳時4月, 右足のつっぱる感じが出現. 次第に増悪し, 疲労時に上下肢に振戦が出現. 8月, 右上肢痙縮, 深部腱反射亢進, 右下肢病的反射陽性, 右下肢軽度筋力低下出現. MRI上異常所見なし. 10月, 大学神経内科に入院. 上記症状に加え, 針筋電図にて, 舌に神経原性変化あり. 錐体路障害が主の運動ニューロン疾患として経過観察となる. 60歳時より車椅子生活. 61歳時, 針筋電図にて下肢と前斜角筋でも神経原性変化出現. 62歳時より全介助. HDS-R13点, 眼球運動は上下方とも軽度制限あり. 舌の萎縮と繊維束攣縮あり. 四肢・頚部は強剛痙...

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Veröffentlicht in:信州医学雑誌 2009, Vol.57 (1), p.34-35
Hauptverfasser: 西平靖, 譚春鳳, 豊島靖子, 谷卓, 高橋均
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:【症例】 64歳男性. 家族歴なし. 59歳時4月, 右足のつっぱる感じが出現. 次第に増悪し, 疲労時に上下肢に振戦が出現. 8月, 右上肢痙縮, 深部腱反射亢進, 右下肢病的反射陽性, 右下肢軽度筋力低下出現. MRI上異常所見なし. 10月, 大学神経内科に入院. 上記症状に加え, 針筋電図にて, 舌に神経原性変化あり. 錐体路障害が主の運動ニューロン疾患として経過観察となる. 60歳時より車椅子生活. 61歳時, 針筋電図にて下肢と前斜角筋でも神経原性変化出現. 62歳時より全介助. HDS-R13点, 眼球運動は上下方とも軽度制限あり. 舌の萎縮と繊維束攣縮あり. 四肢・頚部は強剛痙縮強く, 頚部後屈あり. 入所当初, PSPが最も疑われた. L-Dopa無効. 63歳時, 頭部MRIにて前頭葉・側頭葉の萎縮あり. 3月より左膿胸出現し死亡. 全経過約4年. 【組織所見】 脳重1,090g. 肉眼上, 前頭葉・側頭葉萎縮あり, 特に運動野の萎縮高度. 黒質, 青斑核色素脱落軽度. 組織学的に, 前頭葉・側頭葉の変性は軽度だが, 運動野では高度, 側頭葉内側部, 線条体では中等度の神経細胞脱落とグリオーシス. 脳幹の下位運動神経核では軽度, 脊髄前角では中等度の神経細胞脱落とグリオーシス. ブニナ小体なし. 脊髄側索は髄鞘染色で淡明化. 加えて, 本例では, 多くの部位で4リピートタウ陽性の神経細胞(上位・下位運動神経, 線条体小型神経細胞, 黒質色素含有細胞など)胞体内封入体の, 運動野, 線条体を中心にtuft-shaped astrocyteの, また, 大脳白質を中心にcoiled body様oligodendrocyteの出現が認められた. 運動野神経細胞胞体内封入体の電顕像では, 長い波状の線維が束となって認められた. 【まとめ】 本例は運動ニューロン病, パーキンソニズム, 前頭側頭葉認知症の臨床症状を呈し, 病理学的には, 広汎な部位の神経細胞, グリア細胞胞体内に4リピートタウの蓄積が認められた. 我々は以前にも同様の臨床病理像を呈した症例を経験している(Piao YS et al.Acta Neuropathol 110:600-6006,2005). 類似の症例は極めて稀とは思われるが, その臨床病理像は孤発性4リピートタウオパチーのひとつのdisease entityを構築する可能性が考えられる.
ISSN:0037-3826