Modulation of Brachioradialis Motoneuron Excitabilities by Group I Fibers of the Median Nerve in Humans(ヒト正中神経I群線維による腕橈骨筋運動細胞の興奮性の調節)
【目的】上腕二頭筋は肘関節の屈曲と前腕の回外の作用があり, 腕橈骨筋も同様に肘関節を屈曲させる作用がある. 我々の以前のPSTH(post-stimulus time-histogram)法を用いた研究では, 上腕二頭筋と腕橈骨筋間には, 拮抗筋に見られるようなI群線維を介する寡シナプス性の相反性抑制があることを示した. この抑制は, 肘関節の伸展方向に一定の負荷をかけた持続的な肘関節屈曲運動の際, 前腕の回内または回外運動をした時, 肘関節の屈曲力を調節するためにあるものと考えられた. 一方, 上腕二頭筋運動細胞は正中神経からの低閾値求心性神経の促通と抑制を受けている. それは, 橈側手根屈...
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Veröffentlicht in: | 信州医学雑誌 2008, Vol.56 (5), p.269-271 |
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1. Verfasser: | |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 【目的】上腕二頭筋は肘関節の屈曲と前腕の回外の作用があり, 腕橈骨筋も同様に肘関節を屈曲させる作用がある. 我々の以前のPSTH(post-stimulus time-histogram)法を用いた研究では, 上腕二頭筋と腕橈骨筋間には, 拮抗筋に見られるようなI群線維を介する寡シナプス性の相反性抑制があることを示した. この抑制は, 肘関節の伸展方向に一定の負荷をかけた持続的な肘関節屈曲運動の際, 前腕の回内または回外運動をした時, 肘関節の屈曲力を調節するためにあるものと考えられた. 一方, 上腕二頭筋運動細胞は正中神経からの低閾値求心性神経の促通と抑制を受けている. それは, 橈側手根屈筋からのIa線維からの単シナプス性促通と, 円回内筋I群線維による寡シナプス性抑制が知られているが, 正中神経から腕橈骨筋運動細胞に対しての投射は未だ調べられていない. この研究では, ヒト正中神経から腕橈骨筋への神経投射についてPSTH法を用いて解析したので報告する. 【対象と方法】健常者6名(21-43歳)の右上肢に対し, PSTH法による神経結合の解析を行った. PSTH法とは被検筋の運動単位の発火を筋電図に記録さながら, 他の求心性神経を電気刺激(条件刺激)し, 刺激後の時間と発火数のヒストグラムを作成する方法である. このヒストグラムから刺激なしのヒストグラム(コントロール)を差し引いたもの(差のヒストグラム)に検定を加え, 神経結合の有無を調べた. 検定にはχ2検定を用い, 危険率5%未満(P<0.05)を有意とした. 条件刺激の強さは筋の運動閾値(MT)を基準としてその倍数(×MT)で示した. またCUSUM(累積加算)法を用い差のヒストグラムを折れ線グラフに表示した. 上記方法により, まず肘関節付近の上腕内側筋間中隔を走行する正中神経に対し1.0×MT直下の条件刺激を用い, 腕橈骨筋運動単位に対する結合の有無を調べた. 次いで抑制および促通の見られた運動単位について以下の解析を行った. 抑制および促通の中枢潜時(脊髄における単シナプス性促通との潜時差)をPSTH法にて, 同名筋促通と潜時を比較することにより調べた. 抑制および促通の求心性線維の種類を推定するため, 条件刺激の強度を1.0×MT から段階的に小さくしてPSTH法を行い, 刺激閾値を調べた. また, これらの促通や抑制を起こす筋は何であるかを調べる目的で, 正中神経支配の円回内筋, 橈側手根屈筋, 長掌筋, 手内筋をそれぞれ選択的に刺激し, 促通や抑制の有無を調べると同時に, 同運動単位を用い, 正中神経刺激で誘発される神経結合との潜時差を計測した. 【結果】条件刺激強度1.0×MT直下でPSTHによる解析を行ったところ, 腕橈骨筋運動単位171個中72個に促通, 43個に抑制が誘発された. 残りの運動単位には促通も抑制も誘発されなかった. これらの促通や抑制は運動閾値よりもかなり弱い刺激で発現した. これらの結合の中枢潜時は, 促通が-0.13±0.73(mean±SD)ms, 抑制が0.13±1.29(mean±SD)msであり, 同名筋促通とほぼ同じ値であった. 皮膚の電気刺激ではこれらの促通や抑制は誘発されなかった. 同様な抑制は正中神経支配である円回内筋, 長掌筋, 橈側手根屈筋の求心性神経刺激でも誘発され, 促通は手内筋刺激で誘発された. また, 各筋からの神経結合と肘関節付近の正中神経刺激で誘発される促通または抑制の潜時とを比較した結果, ほぼ同じ潜時を示した. 【考察】今回の解析からヒト正中神経から腕橈骨筋への神経結合は, 促通と抑制があることが明らかとなった. これらの促通や抑制は運動閾値よりも弱い条件刺激で発現した. したがって求心性線維としてはα運動線維よりも閾値の低いI群線維の関与が示される. また, これらの促通と抑制の中枢潜時は-0.13±0.73msと0.13±1.29msであった. ヒトにおけるシナプス遅延は約1msとされているため, この促通は単シナプス性の経路であり, 抑制は寡シナプス性の経路をとることがわかる. この促通は, 正中神経の手根部での刺激によって誘発される促通と潜時がほぼ一致したことから, 手内筋の関与が, また抑制に関しては円回内筋, 長掌筋, 橈側手根屈筋の関与が示唆された. |
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ISSN: | 0037-3826 |