胎児におけるシトクロムP450の発現 ―肝臓のCYP3A分子種を中心として

I はじめに 慢性疾患で薬物の長期服用を余儀なくされている女性が, 妊娠を希望する場合や妊娠中に薬物投与が必要となる場合もあるが, 使用経験が少ない薬物においては有益な医薬品情報が極めて少ない. 胎児に対する薬物の影響は, 臨床試験を通じて直接みることは不可能であり, 倫理的にも許されるべきものでないため, 実験動物を用いた毒性試験等により代替されている. しかし, 薬物代謝酵素には種差があり, 代謝経路が異なることが一つの問題となっている. さらに, ヒト胎児の肝臓には動物胎仔に比べ高いレベルの薬物代謝活性がみられるため, 酵素誘導や阻害の予測は実験動物のみでは不十分である. 本綜説において...

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Veröffentlicht in:信州医学雑誌 2008, Vol.56 (1), p.7-16
Hauptverfasser: 松永民秀, 丸山昌孝, 大森栄
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:I はじめに 慢性疾患で薬物の長期服用を余儀なくされている女性が, 妊娠を希望する場合や妊娠中に薬物投与が必要となる場合もあるが, 使用経験が少ない薬物においては有益な医薬品情報が極めて少ない. 胎児に対する薬物の影響は, 臨床試験を通じて直接みることは不可能であり, 倫理的にも許されるべきものでないため, 実験動物を用いた毒性試験等により代替されている. しかし, 薬物代謝酵素には種差があり, 代謝経路が異なることが一つの問題となっている. さらに, ヒト胎児の肝臓には動物胎仔に比べ高いレベルの薬物代謝活性がみられるため, 酵素誘導や阻害の予測は実験動物のみでは不十分である. 本綜説においては, 代表的な薬物代謝酵素であるシトクロムP450(CYP)の胎児での発現あるいはその変動について, CYP3A分子種を中心に, 胎児肝細胞を用いた筆者らの研究結果も交えて紹介する. II 薬物代謝酵素の概要:シトクロムP450(CYP) 医薬品, 環境化学物質, 農薬, 食品添加物など脂溶性の化学物質の多くは, 体内に取り込まれると主に肝臓に局在する薬物代謝酵素により代謝され, 一部の例外を除き水溶性が増大することで体外に排泄され易くなる.
ISSN:0037-3826