ヒューストン便り

この4月から小児医学講座の小池教授のご高配で, 米国テキサス州ヒューストンにあるBaylor医科大学Center for Cell and Gene Therapyに留学しています. 私の所属するラボはBaylor医科大学の附属施設であるTexas Children's HospitalのCancer Centerにあり, ダウンタウンから車で20分くらいのところに位置します. そこには, Baylor医科大学, MD Anderson癌センターをはじめとする多数の大学の医療関連施設が一同に集まり, 巨大なTexas Medical Centerというコミュニティーを構成しています....

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Veröffentlicht in:信州医学雑誌 2007, Vol.55(6), pp.377
1. Verfasser: 中沢, 洋三
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:この4月から小児医学講座の小池教授のご高配で, 米国テキサス州ヒューストンにあるBaylor医科大学Center for Cell and Gene Therapyに留学しています. 私の所属するラボはBaylor医科大学の附属施設であるTexas Children's HospitalのCancer Centerにあり, ダウンタウンから車で20分くらいのところに位置します. そこには, Baylor医科大学, MD Anderson癌センターをはじめとする多数の大学の医療関連施設が一同に集まり, 巨大なTexas Medical Centerというコミュニティーを構成しています. 私のボス, Dr Rooneyは移植患者のEBウイルスやアデノウイルス感染症に対するウイルス特異的T細胞療法や癌特異的T細胞療法の世界的権威で, 日本にもこれまで4回招聘されています. ご主人も私のラボが所属するCenter for Cell and Gene Therapy全体のセンター長で, やはりこちらも白血病患者や移植患者に対する細胞療法の権威で, 夫婦揃って活躍されています. 彼女は4人の子供の子育てをしながら30人以上の大所帯のラボを運営するグレートマザーで, ラボの誰からも尊敬されています. ボスドクの教育には, 結果だけを求めるのではなく, そこにたどり着くまでの思考のプロセスを大変大事にするのが彼女の特徴です. ここでの研究は, 基礎研究で良い結果がでれば, そのまま附属のTexas Children's HospitalやMethodist Hospitalの患者への臨床に速やかに応用されます. 臨床応用へのハードルが高い日本との大きな差を実感します. 日本人メジャーリーガーがいないヒューストンは, NASAがある程度しか日本ではなじみがないのでこの場を借りて少し紹介させていただきます. ヒューストンは風光明媚な観光地ではありませんが, 石油産業, 医療が発展した米国で4番目の人口を有する大都市です. そのため, 日本から観光客は来ませんが, 驚くほどたくさんの日本人が仕事や留学のために暮らしています. 息子が通う現地の小学校にも附属の幼稚園を含めると20家族で40人くらいの日本人子女が在籍しています. ヒューストンは大きな都市なだけあって巨大なショッピングモールや, 野球, バスケット, アメリカンフットボール, アイスホッケー, サッカーなどのプロスポーツチームが揃い, 車で1時間程郊外に足を伸ばせば州立公園, メキシコ湾, NASAなどがあり, 生活面や遊びでは事欠きません. その一方で, 亜熱帯気候のため, 沖縄ぐらい暑く, 2日に一度は夕方のスコールがあり, 夏にはハリケーンが発生するなど気候的に日本人には厳しいものがあります. プロ野球選手がヒューストン・アストロズを目指さないのはこの辺に理由があるのでしょう. 最後に, 私は留学にあたり日本人は英語が話せなくて当たり前, 留学先で英語が習得できれば良いと開き直ってこちらに来ました. 当然, 英語が下手で苦労していますが, 多くの日本人留学生は似たり寄ったりでしょう. しかし, 中国人も, インド人も, エジプト人も, タンザニア人も, イタリア人も, フランス人も, なんとイラク人まで英語を母国語にしていない日本人以外のすべてのボスドクが流暢に英語を話せることに大変驚き, 英語を話せなくて当たり前と開き直っていた自分を恥ずかしく思いました. 日本の英語教育はなんだったのだろうと思いながら拙い英語を操る毎日です. (2007年9月)
ISSN:0037-3826
1884-6580
DOI:10.11441/shinshumedj.55.377