3 当院で診療した再生不良性貧血10例の臨床経過

【はじめに】再生不良性貧血は免疫抑制療法と造血幹細胞移植の導入により大幅に予後が改善している.免疫抑制療法はCyA+ATG(ALG)療法が行われるようになって50~70%の奏効率が得られるようになったが,骨髄移植は日本国内でHLA一致血縁ドナーから移植された小児では長期生存率が90%と優れた成績が得られており,最重症例,重症例に対してHLA一致血縁ドナーが得られた場合は現在も骨髄移植が第一選択となっている.再生不良性貧血に対する骨髄移植を成功させる錠として重要なのが拒絶をいかに防ぐかであり,どのような移植前処置を行うかが問題となる.【方法・結果】当院で診療した再生不良性貧血患者の経過をまとめ,...

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Veröffentlicht in:信州医学雑誌 2005, Vol.53 (3), p.187-187
Hauptverfasser: 岡田まゆみ, 西村貴文, 安部マサ子, 石井栄三郎
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:【はじめに】再生不良性貧血は免疫抑制療法と造血幹細胞移植の導入により大幅に予後が改善している.免疫抑制療法はCyA+ATG(ALG)療法が行われるようになって50~70%の奏効率が得られるようになったが,骨髄移植は日本国内でHLA一致血縁ドナーから移植された小児では長期生存率が90%と優れた成績が得られており,最重症例,重症例に対してHLA一致血縁ドナーが得られた場合は現在も骨髄移植が第一選択となっている.再生不良性貧血に対する骨髄移植を成功させる錠として重要なのが拒絶をいかに防ぐかであり,どのような移植前処置を行うかが問題となる.【方法・結果】当院で診療した再生不良性貧血患者の経過をまとめ,治療の問題点について検討を行った.対照は1994年2月から2004年9月までの10年間に当院で診療した再生不良性貧血患者10例(特発性:8例,肝炎後:1例,Fanconi貧血:1例)(重症度分類:中等症1例,重症8例,最重症1例).診断時年齢は平均7.6歳(2.6~17歳),性別は男児6例,女児4例.重症,最重症の9例中8例に骨髄移植を施行し,1例はHLA完全一致同胞間骨髄移植を予定.骨髄移植の内訳は,同胞間が7例(HLA完全一致4例,一座不一致2例,二座不一致1例),非血縁者間が1例であった.前処置は,同胞間移植ではHLA完全一致例に対しCY+ATGまたはALG例(4例),一座不一致例に対しCY+TLI7.5Gy(1例),CY+TBI5Gy(1例),HLA二座不一致例に対しCY+ATG+TBI10Gy(1例).非血縁者間骨髄移植ではCY+ATG+Flu+TLI3Gy(1例)で行った.移植細胞数は平均3.36×108/kg,GVHD予防は同胞間移植では全例CyA+short MTX,非血縁者間移植はFK506+short MTXで行った.移植した8例中,前処置をCPM+ATGで施行した2例に晩期拒絶がみられた.この2例はHLA完全一致同胞間移植で,十分量の細胞数(平均4.0×108/kg)が移植されていた.現在前処置の免疫抑制を強化するためFluを使用したレジメンが小児再生不良性貧血治療プロトコール002で検討されているが,当院では非血縁者間骨髄移植1例に対しFluを用いた前処置を行った.症例は特発性再生不良性貧血重症型の14歳男児.8歳時に発症し,2度の免疫抑制療法を受けたが再発.骨髄バンクにHLA完全一致ドナーが得られたため非血縁者間骨髄移植を施行した.前処置はCPM3g/m2+ATG+Flu(25mg/m2×4)+TLI(3Gy),移植細胞数は2.35×108/kg,GVHD予防はFK506+short Term MTXで行った.好中球はday+21で500/μlに達し,網状赤血球はday+20に10‰に達し生着を確認した.移植前の検索で血液中にEBVが7copy/104WBCと極少量陽性となっていたが,移植後早期には消失していた.しかし移植day+60にEBV関連LPDを発症,リツキシマブの投与とDLIを施行し,DLI後limited typeの慢性GVHDを発症している.【まとめ】当院の診療患者数は少ないものの,移植例においてII°以上の急性GVHD,extensive typeの慢性GVHDの発症例がなく,小児の重症,最重症再性不良性貧血の治療として同胞間移植は有効な治療であると考えた.性腺機能低下,低身長,二次癌等の晩期合併症発症例はなかったが,経過観察期間が短いため,特にTBI,TLIを行った症例に対し長期的な観察が必要であると考えた.またHLA一致同胞間移植の前処置は拒絶予防を目的に放射線照射を併用していたが,二次癌の問題よりSeattleから提唱されたCPM+ATGが標準治療とされてきた.しかし国内の報告では,CPM+ATG(ALT)による前処置では生着不全や混合キメラとなることが多いといわれている.当院でも前処置をCPM+ATGで行った症例では拒絶が起きやすいと考えられた.小児再生不良性貧血-02プロトコールで検討されているFluを含む前処理での生着率の改善,混合キメラの発生率低下が期待されるが,Fluを使用することで免疫抑制状態が強化されるため,特にfirst line治療としてCyA+ATGによる免疫抑制療法を受けている患者においてEBV,CMVなどのウイルス再活性化が移植後合併症として問題になるのではないかと考えた.
ISSN:0037-3826