短期間低酸素刺激によるヒト歯髄幹細胞K4DTの分化誘導に及ぼす影響

歯髄細胞への低酸素刺激は細胞増殖能を高め,幹細胞性が上昇すると報告されている.しかし,抜去歯から採取された歯髄細胞には,象牙芽細胞や線維芽細胞などの分化細胞だけでなく,未分化な歯髄幹細胞も含まれている.本研究では,無限分裂ヒト歯髄幹細胞(K4DT)に対する短期間低酸素刺激による分化・脱分化への影響を検討した.低酸素刺激として,3%酸素,5%二酸化炭素,92%窒素の混合ガス下で2,4,6時間培養した.2,4時間の低酸素刺激により低酸素誘導因子hypoxia-inducible factor 1α(HIF-1α)のmRNA発現は有意に上昇し,ウェスタンブロッティング法にてタンパク質量の増加を確認し...

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Veröffentlicht in:九州歯科学会雑誌 2024/06/25, Vol.78(1-2), pp.12-20
Hauptverfasser: 中垣(梶原), 優那, 折本, 愛, 郡司掛(米谷), 香織, 徐, 嘉鍵, 中富, 千尋, 臼井, 通彦, 有吉, 渉, 豊野, 孝, 小野, 堅太郎, 川元, 龍夫
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:歯髄細胞への低酸素刺激は細胞増殖能を高め,幹細胞性が上昇すると報告されている.しかし,抜去歯から採取された歯髄細胞には,象牙芽細胞や線維芽細胞などの分化細胞だけでなく,未分化な歯髄幹細胞も含まれている.本研究では,無限分裂ヒト歯髄幹細胞(K4DT)に対する短期間低酸素刺激による分化・脱分化への影響を検討した.低酸素刺激として,3%酸素,5%二酸化炭素,92%窒素の混合ガス下で2,4,6時間培養した.2,4時間の低酸素刺激により低酸素誘導因子hypoxia-inducible factor 1α(HIF-1α)のmRNA発現は有意に上昇し,ウェスタンブロッティング法にてタンパク質量の増加を確認した.低酸素環境下において,K4DT の細胞生存率は4時間後に有意に上昇していた.HIF-1αの標的遺伝子として知られる血管内皮細胞増殖因子 vascular endothelial growth factor AのmRNA発現は6時間の低酸素刺激で有意に上昇していたが,骨分化マーカーalkaline phosphataseとcollagen Iおよび脂肪分化マーカーlipoprotein lipaseのmRNA発現は低下していた.フローサイトメトリー解析において,間葉系幹細胞のマーカーの蛍光強度は変化しなかった.低酸素刺激による分化K4DTへの影響を検討するため,K4DTを骨分化培地にて14日間処理した.未分化細胞と比べて,骨分化K4DTは著しくHIF-1αのmRNA発現が増加し,低酸素刺激によるHIF-1αのmRNA発現に変化はなかった.これらの結果より,歯髄幹細胞は低酸素刺激により血管新生を促進する可能性が示唆された.
ISSN:0368-6833
1880-8719
DOI:10.2504/kds.78.12