支台歯の挙動解析のための3次元6自由度計測装置の開発
「主論文の要旨」 当講座では, 可撤性局部義歯における残存組織ことに支台歯を可及的に長時間, 健康な状態で保持するため, 重要な影響を与えると考えられる維持装置の各種デザインによる支台歯の挙動解析を行ってきた. これまでにも挙動解析における様々な計測方法が考案され, 新知見も見出されたが, 支台歯は瞬間的に複雑な動きをするため, 現在のところ, この動きを完全に把握できる計測法は確立されていない. 本研究では, 従来の装置で測定が困難な支台歯の微細な動きを解明するため, 新たに3個の位置検出素子とレーザー発振器を用いて高精度かつコンパクトな3次元6自由度の計測装置を開発した. この計測装置は,...
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Veröffentlicht in: | 九州歯科学会雑誌 1999, Vol.53 (3), p.439-440 |
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1. Verfasser: | |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 「主論文の要旨」 当講座では, 可撤性局部義歯における残存組織ことに支台歯を可及的に長時間, 健康な状態で保持するため, 重要な影響を与えると考えられる維持装置の各種デザインによる支台歯の挙動解析を行ってきた. これまでにも挙動解析における様々な計測方法が考案され, 新知見も見出されたが, 支台歯は瞬間的に複雑な動きをするため, 現在のところ, この動きを完全に把握できる計測法は確立されていない. 本研究では, 従来の装置で測定が困難な支台歯の微細な動きを解明するため, 新たに3個の位置検出素子とレーザー発振器を用いて高精度かつコンパクトな3次元6自由度の計測装置を開発した. この計測装置は, 発振器ユニットと受光部ユニットから構成され, 発振器ユニットから, 3方向に出力したレーザー光を受光部ユニットの3個の位置検出素子でとらえ, それぞれの座標を合成することで, 3次元6自由度の計測を可能にした. 発振器ユニットは1個のレーザー発振器とハーフミラーからなり, 重量7gと軽量である. 一方, 受光部ユニットの位置分解能は6.0×10-3mm, 角度分析能は8.6×10-4度であり, 応答速度は0.5マイクロ秒と高速なため, 支台歯の微細かつ素速い動きを連続挙動として精確に把握できる. 本研究では, 本装置の有用性を検討するため, 右側第1, 2大臼歯欠損, Kennedy II級シミュレーションモデル上で5種類の維持装置(エーカース;As, プロキシマルプレート付エーカース;Ap, バックアクション;Ba, クロール型RPI;Kr, クラトビル型RPI;Kt)を用いた時の支台歯の動きを解析した, その結果, Ap, Asを用いた場合, 傾斜回転, 歯体移動および沈下などの全ての支台歯の動きが他のクラスプと比較して最も大きくなった. またBaでは, 支台歯の傾斜は小さかったが, 回転や歯体移動は大きくなる傾向があった. さらに, Ktでは支台歯の各動きが最も小さくなり, Krでは, 荷重を増加させていく過程のグラフ上で, 蛇行や戻りとして観察された支台歯の変位方向の変化が顕著に認められた. 以上の結果より, 本装置は荷重下における支台歯の挙動を3次元6自由度の連続的な動きとしてモニタ上で観察できるため, 支台歯の挙動上の差異を精細に比較検討するうえで, 優れた性能を有していることがわかった. また, 本装置は非常にコンパクトであり, センサの配置が容易であるため口腔内への装着が可能であり, 生体における支台歯の挙動計測装置としての実用が期待できる. 「論文審査結果の要旨」 従来の装置では測定が困難な支台歯の微細な動きを解明するために, 新たに3個の位置検出素子とレーザー発振器を用いて高精度かつコンパクトな3次元6自由度解析装置を開発したものである. この計測装置は, 発振器ユニットと受光部ユニットから構成されており, 発振器ユニットは1個のレーザー発振器とハーフミラーからなり, 重量7gと軽量である. 一方, 受光部ユニットは3個の位置検出素子より構成されている. このセンサの位置分解能は6.0×10-3mm, 角度分解能は8.6×10-7度, 応答速度は0.5マイクロ秒と高速なため, 支台歯の微細かつ素速い動きを的確に把握し, 連続挙動として解析している. 右側第12大臼歯欠損, Kennedy II級シミュレーションモデル上で5種類の維持装置(エーカース;As, プロキシマルプレート付エーカース;Ap, バックアクション;Ba, クロール型RPI;Kr, クラトビル型RPI;Kt)を用いた時の支台歯の動きを解析し, 次のような結果を得ている. 1)Ap, Asを用いた場合, 傾斜, 回転, 歯体移動および沈下などの全ての支台歯の動きが他のクラスプと比較して最も大きくなった. またBaでは, 支台歯の傾斜は小さかったが, 回転や歯体移動は大きくなる傾向があった. さらに, Ktでは支台歯の各動きが最も小さくなった. 2)Krでは, 荷重を増加させていく過程のグラフ上で, 支台歯の蛇行や戻りとして観察された変位方向の変化が顕著に認められた. 以上の結果にもみられるように, 本装置では荷重下における支台歯の挙動を3次元6自由度の連続的な動きとしてモニター上で観察できるため, 支台歯の挙動上の差異を精細に比較検討できるとしている. 残存組織とくに支台歯を可及的に長時間, 健全な状態で保持するため, 義歯デザインの適否を決定することは, 補綴学における世界的な関心事のひとつである. それにも関わらず, これまでは実用に堪え得る方法あるいは計測機器が全くなかったが, 著者の開発した本装置は, 高性能かつコンパクトであるため, 生体の支台歯挙動計測装置としての実用が期待できるとともに, 将来的にはデザイン適否の診断機器として, また顎運動計測装置としての転用も期待できる素晴らしい研究である. したがって, 学位論文としても十二分に価値ある業績と認めた. |
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ISSN: | 0368-6833 |