リツキシマブとその後のステロイド治療により寛解達成し得た出血性胃潰瘍合併後天性血友病Aの1例

後天性血友病A (AHA) は凝固第VIII因子 (FVIII) に対する自己抗体が産生されることにより発症する稀な出血性凝固異常症である. 今回, 我々は出血性胃潰瘍を契機にAHAと診断され, ステロイドによる治療介入が不適当と考えられた症例に対して, 初回治療としてリツキシマブ投与を行い良好な経過を辿った症例を経験したので文献的考察を含め報告する. 症例は, 78歳の男性. X年6月頃から誘因なく四肢の紫斑形成あり. 12月に腹部症状, 黒色便, 貧血症状を認め, 出血性胃潰瘍の診断で前医に入院. 内視鏡的止血処置を繰り返したが, 止血不良であり, APTT延長も認めたため, 精査目的に当...

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Veröffentlicht in:THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL 2016/05/01, Vol.66(2), pp.149-154
Hauptverfasser: 小川, 孔幸, 柳澤, 邦雄, 内藤, 千晶, 石埼, 卓馬, 三原, 正大, 野口, 紘幸, 三井, 健揮, 清水, 啓明, 半田, 寛, 野島, 美久
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:後天性血友病A (AHA) は凝固第VIII因子 (FVIII) に対する自己抗体が産生されることにより発症する稀な出血性凝固異常症である. 今回, 我々は出血性胃潰瘍を契機にAHAと診断され, ステロイドによる治療介入が不適当と考えられた症例に対して, 初回治療としてリツキシマブ投与を行い良好な経過を辿った症例を経験したので文献的考察を含め報告する. 症例は, 78歳の男性. X年6月頃から誘因なく四肢の紫斑形成あり. 12月に腹部症状, 黒色便, 貧血症状を認め, 出血性胃潰瘍の診断で前医に入院. 内視鏡的止血処置を繰り返したが, 止血不良であり, APTT延長も認めたため, 精査目的に当院転院. FVIII活性2.0%, FVIII inhibitor 34.9 BU/mLでAHAと診断した. 出血性胃潰瘍を合併しており, この時点でのステロイド治療が躊躇われたため, リツキシマブで免疫抑制療法を開始した. リツキシマブを4回投与後にinhibitor力価の低減を認めたため, もう1ヶ月の経過観察を行い, 胃潰瘍の改善を待って, プレドニゾロン (PSL) 25 mg/日 (0.5 mg/kg) の追加治療を行った. 治療開始後第85病日にinhibitor検出感度以下, FVIII活性正常化を確認し, 寛解判定となる. 以降は外来でPSLを漸減しているが, AHAの再燃なく経過している. 胃潰瘍はやや治癒遷延したが, 消化管安静と制酸剤治療等により最終的には瘢痕治癒した. これまでにAHAに対するリツキシマブ治療の有効性に関する報告が複数存在するが, 本邦では, 現時点でリツキシマブはAHAに対して保険適応となっていない. 本疾患群に対するリツキシマブ治療の有効性と安全性を明らかにし, 保険適応拡大を目指す必要があると考えられる.
ISSN:1343-2826
1881-1191
DOI:10.2974/kmj.66.149