18. 筆談用ノートに書かれた言葉を「反復」することで援助となり得るのだろうか ―援助者の戸惑い
【はじめに】今回, 下咽頭がん終末期の患者に「かんわ支援チーム(以下, チーム)」が介入した. 患者は時々口腔内や頸部より出血があり, 辛い症状や苦しみを筆談で表出していた. いつ大出血するか分からない病態であり, 患者の精神的苦痛やスピリチュアルな苦痛は計り知れないほど大きかったであろう. 患者が死を迎えるまでの関わりについて報告する. 今回の発表にあたり, 患者とその家族のプライバシー保護に留意し, 家族に同意を得ている. 【事例紹介】A氏, 60歳代男性. 下咽頭がんで頸部リンパ節転移と肺転移があった. X年12月身体的苦痛と精神的苦痛の緩和目的にてチームへ依頼となった. 気管切開をして...
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Veröffentlicht in: | THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL 2011-02, Vol.61 (1), p.90-90 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 【はじめに】今回, 下咽頭がん終末期の患者に「かんわ支援チーム(以下, チーム)」が介入した. 患者は時々口腔内や頸部より出血があり, 辛い症状や苦しみを筆談で表出していた. いつ大出血するか分からない病態であり, 患者の精神的苦痛やスピリチュアルな苦痛は計り知れないほど大きかったであろう. 患者が死を迎えるまでの関わりについて報告する. 今回の発表にあたり, 患者とその家族のプライバシー保護に留意し, 家族に同意を得ている. 【事例紹介】A氏, 60歳代男性. 下咽頭がんで頸部リンパ節転移と肺転移があった. X年12月身体的苦痛と精神的苦痛の緩和目的にてチームへ依頼となった. 気管切開をしており筆談での会話であった. 個室で過ごされ, 出血の危険性のためベット上安静の指示であった. 【経過】身体症状として右頸部の間歇的に電気が走るような痛みと呼吸困難感があった. 夜目が覚めるとその後眠れず, 朝までの時間が辛いようであった. 介入前からの投薬のほか, 鎮痛補助薬やモルヒネ塩酸塩持続投与を開始した. A氏は筆談用ノートに自分の思いを書き, 時には1時間に及ぶ筆談もあった. 家族のこと, 動けないこと, 食べられないこと, 話ができないことなど自分が何も出来ないことへの苦しみの表出であった. A氏の苦しみに対して, 訪室の際には必ず椅子に座り, ベットサイドでの「反復」による傾聴を行っていった. 約1ヶ月弱の間「反復」による傾聴を行ったが, 「辛い. 死にたいくらい辛い」と投薬を拒否するなど傾聴での対応が困難な状態となった. チームの精神科医の診断を仰ぎ投薬が開始となった. その後, 病状の悪化に伴うせん妄が出現し, 対策を行うも改善せず, 酸素マスクを外し何度も気管カニューレを自己抜去し, 気管孔に指を入れる動作をするようになった. チームは危険行動に対して鎮静が必要と判断し, 家族の同意のもと鎮静を開始した. A氏は鎮静開始2日後に死亡された. 【考察】チームはA氏の筆談による苦しみの表出に「反復」での傾聴を行ってきた. 筆談に対する「反復」を行う時に援助者は, 記載内容を読むことで全文を相手に反復することができる. また相手は自分の思いをノートに記載するのでその際に話す内容(苦しみ)を整理することが出来るのではないかと考えられる. 本事例では筆談で自分の苦しみを何度も表出してくれていた. それはA氏にとってチームが援助者として存在していたからとも考えられる. しかし, 最終的には早急な精神的治療が必要な状態に陥ってしまった. 援助者として筆談された言葉を「反復」することが援助となり得ていたのだろうか, 筆談による対人援助方法を若干の文献的考察を加え報告する. |
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ISSN: | 1343-2826 |