6. 若年者の腰椎椎間板ヘルニア―競泳選手に生じた一例

【目的】若年競泳選手に生じた腰椎椎間板ヘルニアに対しMEDを施行した1例を経験したため報告する. 【症例】高校1年生, 男子. 競泳の種目は自由型. 主訴は左下肢痛であり, 中学3年の8月頃より生じていた. 痛みに耐えながら練習に参加していたが, 競技記録は向上しなかった. シーズンオフに疼痛が改善し, 高校1年の4月から練習を再開したが, 疼痛が再燃した. 近医にて加療をうけたものの, 疼痛に改善を認めず練習にも支障を来してきたため, 手術目的に当科を紹介受診した. 初診時所見では左下腿外側に疼痛を訴えており, SLRTは左10度, 右40度であり, 典型的なtight hamstrings...

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Veröffentlicht in:THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL 2010, Vol.60 (4), p.392-393
Hauptverfasser: 角田大介, 飯塚伯, 飯塚陽一, 西野目昌宏, 高岸憲二
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:【目的】若年競泳選手に生じた腰椎椎間板ヘルニアに対しMEDを施行した1例を経験したため報告する. 【症例】高校1年生, 男子. 競泳の種目は自由型. 主訴は左下肢痛であり, 中学3年の8月頃より生じていた. 痛みに耐えながら練習に参加していたが, 競技記録は向上しなかった. シーズンオフに疼痛が改善し, 高校1年の4月から練習を再開したが, 疼痛が再燃した. 近医にて加療をうけたものの, 疼痛に改善を認めず練習にも支障を来してきたため, 手術目的に当科を紹介受診した. 初診時所見では左下腿外側に疼痛を訴えており, SLRTは左10度, 右40度であり, 典型的なtight hamstringsを呈していた. 下肢筋伸張反射に亢進並びに低下を認めなかった. 筋力低下を認めなかった. 画像所見では腰椎X線像にて, 軽度の疼痛性側彎を認めた. MRIにてL4/5腰椎間に硬膜間左側に突出する椎間板ヘルニアを認めた. 以上より, 腰椎椎間板ヘルニアによる下肢症状と考え, 内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術を施行した. ヘルニアの脱出形態は, subligamentous extrusion typeであった, 術直後より下肢痛は改善し, 術後5日で退院した. 術後2週より, 体幹部筋力のisometric exerciseを開始させた. 術後1ヶ月時のSLRTは左右とも60度, 術後3ヶ月時では左右とも70度となり, tight hamstringsは改善していた. 術後2ヶ月より, 本格的に運動を再開した. その後も疼痛なく練習でき, 自己ベストを更新できるまでに至った. 【考察】競泳では強大な衝撃力が身体に作用することは少ないため, 外傷の頻度は低く, 繰り返しの動作による障害の発生頻度が高いと思われる. 水泳は脊椎に負荷の少ない非荷重環境での運動であり, 腰痛体操のひとつとして活用される面もあるが, 運動量が極端に多くなった場合には椎間板変性の発生する頻度は高くなるとの報告がある. 若年者に生じた腰椎椎間板ヘルニアの特徴として, tight hamstringsが挙げられるが, 本症例も同様の特徴を呈していた. 本症例は自由型を専門としており, tight hamstringsの影響は比較的少ないものと思われるが, 著しい前屈制限により, 通常の練習に障害を来していた. 内視鏡下の椎間板ヘルニア摘出術は, 術後早期の再脱出が多い事が報告されている. 本症例では, 術後1ヶ月までは比較的安静を保持させ, 術後1ヶ月より少しずつ運動を再開させた. 術後2ヶ月にて完全復帰をさせた. 自由型は種目の中で比較的腰部への負担は少ないものと思われるが, バタフライや背泳ぎ等腰部への負担が大きい種目の場合, 後療法への若干の配慮が必要と思われる. 本症例は比較的競技水準の高い若年の競泳選手であったが, 手術後良好な経過を示している.
ISSN:1343-2826