28. 腸閉塞を伴う閉鎖孔ヘルニアに対して, 腹膜前腔からと腹腔内からのアプローチを併用する術式

【緒言】 閉鎖孔ヘルニアは, やせた高齢女性に多くまれな疾患である. 治療法は基本的に手術であり, そのアプローチは開腹法・鼡径法・大腿法・腹腔鏡などが挙げられるが, 術式は確立されていない. 今回我々は, 下腹部正中切開を行い, 腹膜前側からのアプローチと腹膜切開による腹腔内からのアプローチによりヘルニア根治術, 壊死した腹膜の切除を行い, 良好な経過を得た症例を経験したので報告する. 【症例】 症例は86歳, 女性. 腰椎圧迫骨折にて近医にリハビリ入院中であった. 夜間に腹痛を認めたため近医を受診し, 腹部造影CTで右閉鎖孔ヘルニア嵌頓とそれに伴うイレウスを認めたため翌朝に当院を紹介され,...

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Veröffentlicht in:THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL 2010, Vol.60 (3), p.286-286
Hauptverfasser: 木村慎太郎, 須藤利永, 鈴木一也, 岡田朗子, 斉藤加奈, 諸原浩二, 矢島俊樹, 大澤秀信, 片山和久, 保田尚邦, 田中司玄文, 根岸健, 神坂幸次
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:【緒言】 閉鎖孔ヘルニアは, やせた高齢女性に多くまれな疾患である. 治療法は基本的に手術であり, そのアプローチは開腹法・鼡径法・大腿法・腹腔鏡などが挙げられるが, 術式は確立されていない. 今回我々は, 下腹部正中切開を行い, 腹膜前側からのアプローチと腹膜切開による腹腔内からのアプローチによりヘルニア根治術, 壊死した腹膜の切除を行い, 良好な経過を得た症例を経験したので報告する. 【症例】 症例は86歳, 女性. 腰椎圧迫骨折にて近医にリハビリ入院中であった. 夜間に腹痛を認めたため近医を受診し, 腹部造影CTで右閉鎖孔ヘルニア嵌頓とそれに伴うイレウスを認めたため翌朝に当院を紹介され, 受診した. ヘルニア嵌頓によるイレウスと診断し, 同日緊急手術を施行した. 下腹部正中に皮切を行い, 腹膜前アプローチにて閉鎖孔に陥入した腹膜を確認した. 用手的にヘルニア嚢を引き出したところ, 腹膜は壊死した状態であったため, 正中の腹膜を切開し腸管も確認したが, 腸管は一部発赤を認めるのみであった. 壊死した腹膜の切除を行い, 閉鎖管を含め右鼠径部全体をDirect Kugel patchにて覆い, ヘルニア根治術とした. 術後2ヶ月が経過するに過ぎないが, 再発を認めておらず, 順調に経過している. 【考察】 当院では過去5年間に今回の症例も含めて, 10症例の閉鎖孔ヘルニアを経験している. 全例で下腹部正中切開を行っているが, 今回を除く9例は腹腔内アプローチによる術式であった. 右側が7例であった. また, 腸管の絞扼を認め腸切除も施行した症例は5例であった. 10症例中2例では術後再発を認めている. ヘルニア門は9例とも腹腔内から縫合閉鎖し終了している. 腹膜前腔からのアプローチ法は, 鼡径管の脆弱化を回避できる点, 必要であれば腸管切除にも移行できる点, 十分な視野を確保できる点で有用と考える. また閉鎖管の処置を確実にでき, 再発を防ぐという点でも腹膜前腔からのアプローチは有用と考える. 【結語】 閉鎖孔のヘルニアの手術では, 腹腔内にアプローチする前に腹膜前腔にアプローチし, ヘルニア門を明らかにしてから腸管を観察することから望ましいと考えられる.
ISSN:1343-2826