3. 「家で死にたい」という終末期患者と, 受け入れに不安を感じる家族の間でどう関わったか
【事例紹介】患者:A氏, 60代, 女性. 病名:胃癌, 腹膜播種, 多発肝転移, 多発骨転移. 家族構成:長男, 次男と3人暮らし. 長女と姉は看護師だが, 遠方に住んでいる. 【経過】1年前に腹膜播種を伴う胃癌と診断され, 化学療法を行っていたが病状は進行していた. 平成20年X月, 胸痛にて入院. 第3胸椎に大きな転移あり, 脊髄損傷の危険があるため, 体動はベッドアップ30°と寝返りに制限された. モルヒネ持続皮下注で痛みは改善. 可能なら化学療法を続けたいとの希望で1回行ったが, 突然A氏は泣きながら「家に帰りたい. ずっとそう思っていたけど, 言い出せなかった」と訴えた. 家族の同...
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Veröffentlicht in: | THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL 2010, Vol.60 (1), p.67-68 |
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Hauptverfasser: | , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 【事例紹介】患者:A氏, 60代, 女性. 病名:胃癌, 腹膜播種, 多発肝転移, 多発骨転移. 家族構成:長男, 次男と3人暮らし. 長女と姉は看護師だが, 遠方に住んでいる. 【経過】1年前に腹膜播種を伴う胃癌と診断され, 化学療法を行っていたが病状は進行していた. 平成20年X月, 胸痛にて入院. 第3胸椎に大きな転移あり, 脊髄損傷の危険があるため, 体動はベッドアップ30°と寝返りに制限された. モルヒネ持続皮下注で痛みは改善. 可能なら化学療法を続けたいとの希望で1回行ったが, 突然A氏は泣きながら「家に帰りたい. ずっとそう思っていたけど, 言い出せなかった」と訴えた. 家族の同意を得て, 在宅療養の具体的プランを提示し, 準備を始めた. しかし, 化学療法による高度の副作用が出現してしまい, 中断となった. 一度は前向きに考えていた家族も, 主介護者が男兄弟であること, 昼間はA氏が一人になってしまい心配だ, と消極的になり, A氏の容態が回復した後も, 態度を決めかねたまま1か月以上が経過した. その間A氏は, 穏やかだがはっきりと「帰りたい」と話していたが, ついに, 面会に来た姉の前で「うちに帰ってそこで死にたい! どうして連れて帰ってくれないの?」と怒りを露わに訴えた. すかさず家族に, A氏がどんな状態でも家に帰れる準備はできている事を説明した結果, 在宅療養への決心が付き, 翌日病院の救急車で退院となった. 10日後, 家族に看取られながら自宅で永眠された. 【考察】看護師はA氏に, すぐにでも自宅に帰って, 残りの人生を家族とともに過ごしてほしいと思った. しかし, 家族の不安の大きさを考えると, 焦って自宅に帰してもすぐに再入院になり, A氏の希望を叶えることはできないだろうと考えた. そのため, 必要な準備を行いつつも家族に無理強いはせず, 板挟みになりながらも, 家族の決心がつくのをじっと待ったことで, A氏の希望を叶えることができたのではないかと考えられる. |
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ISSN: | 1343-2826 |