11. 終末期患者の食事摂取をめぐる倫理的葛藤
【はじめに】医療者が考える患者様の最善の利益と患者様の意向や希望との間にズレが生じた時, 私達はそのズレをいかにして埋めることができるかに悩む. 今回, 緩和ケアチームへ相談が持ち込まれた事例を通して, 私達が感じ悩みつつある倫理問題について考察する. 【事例】Aさん, 50歳代男性, 肺癌終末期, 生命予後見込みは週単位, PS=3. 誤嚥の危険を回避するため禁飲食管理されていたAさんは, 痛みや息苦しさは気にならないが, 食べることを許されていないことに最も苦痛を感じていた. 食事の工夫にも関わらず, これまで何度も誤嚥性肺炎を繰り返したが治療により危機を乗り越えてきた. 誤嚥とそれにとも...
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Veröffentlicht in: | THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL 2008, Vol.58 (2), p.247-247 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 【はじめに】医療者が考える患者様の最善の利益と患者様の意向や希望との間にズレが生じた時, 私達はそのズレをいかにして埋めることができるかに悩む. 今回, 緩和ケアチームへ相談が持ち込まれた事例を通して, 私達が感じ悩みつつある倫理問題について考察する. 【事例】Aさん, 50歳代男性, 肺癌終末期, 生命予後見込みは週単位, PS=3. 誤嚥の危険を回避するため禁飲食管理されていたAさんは, 痛みや息苦しさは気にならないが, 食べることを許されていないことに最も苦痛を感じていた. 食事の工夫にも関わらず, これまで何度も誤嚥性肺炎を繰り返したが治療により危機を乗り越えてきた. 誤嚥とそれにともなう肺炎・呼吸不全という苦痛を回避するためには禁飲食が必要という医学的判断がAさんとご家族に告げられていて, 納得もされていたようであった. しかし, Aさんは「少しでもいいから食べたい. むせて苦しくなってもいいから食べさせて欲しい」と主治医や病棟看護師に訴え続けた. ケア方針に迷った病棟スタッフは緩和ケアチームへ相談を持ち込んだ. 緩和ケアチームが患者のもとに赴いた. 食べることをご自身の生の証であるとAさんは意味づけていたようであった. 【考察】いのちが限られている終末期患者様では, その人らしさを支えることが看護方針の軸をなすと言われ, 希望を支えることは看護ケアのひとつの目標である. この事例では, まずご自身の, 食に寄せる生の証という意味を支える援助を試みた. しかし, Aさん自身の想いが変わることなくあくまで食にこだわった場合, 窒息による急死という危険にさらすことになっても, Aさんの「食べたい」という希望に沿うことが倫理的に正しいことだろうか. あるいは, 予想される危害を避けるためならばAさんの意思に反する対応も許されるのだろうか. Aさんの自律を支えることと危害を回避することが両立しえない時, 私達は何に基づいて方針を考えればよいのだろうか. 考察を試みたい. |
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ISSN: | 1343-2826 |