4. 当院における肺癌術後補助化学療法について

【はじめに】早期非小細胞肺癌の標準治療は外科的切除である. しかし, 多くの症例が術後の観察中に遠隔転移をきたし, 予後は必ずしも良好とは言えない. そのため, 肺癌切除症例の予後改善のため, 多くの術前, 術後化学療法が試みられてきた. 術前化学療法については, これまでにその有用性が証明されていない. 術後化学療法の有用性は, 1960-70年代に行われた無作為比較試験では示されていなかった. しかし, 最近いくつかの大規模比較試験にて早期非小細胞肺癌に対する術後補助化学療法について, 肯定的な結果が得られてきている. (ASCO2003;IALT試験, ASCO2004;JBR. 10試...

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Veröffentlicht in:THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL 2006, Vol.56 (2), p.168-169
Hauptverfasser: 岩崎靖樹, 石原真一, 富澤由雄, 飯島浩宣, 今井久雄, 矢冨正清, 渡辺 覚, 斎藤龍生, 川島 修, 野内達人, 菅野雅之, 永島宗晃
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:【はじめに】早期非小細胞肺癌の標準治療は外科的切除である. しかし, 多くの症例が術後の観察中に遠隔転移をきたし, 予後は必ずしも良好とは言えない. そのため, 肺癌切除症例の予後改善のため, 多くの術前, 術後化学療法が試みられてきた. 術前化学療法については, これまでにその有用性が証明されていない. 術後化学療法の有用性は, 1960-70年代に行われた無作為比較試験では示されていなかった. しかし, 最近いくつかの大規模比較試験にて早期非小細胞肺癌に対する術後補助化学療法について, 肯定的な結果が得られてきている. (ASCO2003;IALT試験, ASCO2004;JBR. 10試験, CALGB9633試験, ASCO2005;ANITA試験)この結果をふまえて, 当院においても, 2004年5月より術後補助化学療法を開始している. 今回我々は, 2004年5月より2005年4月までの当院における肺癌術後補助化学療法についてまとめた. 【対象】年齢75歳以下. 非小細胞肺癌の病理診断が得られている. 完全切除された病理病期I B~IIIA期. I A期, IIIB期は推奨しない. ECOG PS 0~1, 場合によってPS2. PS3は推奨しない. 適切な臓器機能が保たれる. 腎機能はシスプラチン使用の場合, Ccr60ml/min以上を目安とする. 胸部レントゲン上間質性肺炎/肺線維症を認めない. 重篤な合併症がない. 使用する各薬剤の禁忌に該当しない. 本人から文書にて化学療法の同意が得られている. 治療開始に当たっては, 手術による重篤な合併症から回復している. 上記を対象とした. 【治療レジメン】レジメン(1)病理病期I B~III A期, 非小細胞肺癌;シスプラチン(80mg/m2, day1)+ビノレルビン(25mg/m2, day1, 8)併用で3週間ごとに4cycle繰り返す. レジメン(2)病理病期IB, 非小細胞肺癌, またはII~IIIA期でシスプラチン投与不能非小細胞肺癌;カルボプラチン(AUC5~6, day1)+パクリタキセル(200mg/m2, day1)併用で3週間ごとに4cycle繰り返す. レジメン(3)病理病期I B期, 組織型は腺癌のみ;UFT250mg連日内服, 2年間 とした. 【結果】当院, 2004年5月より2005年4月までの肺癌手術症例, 術後補助化学療法症例についてまとめた. 術後病理病期は(stage I A/I B/II A/II B/III A/III B/IV)(37/26/3/12/12/7/4), 内プラチナベースの術後補助化学療法を行った症例は6例(IB/IIA/IIB/IIIA)(0/0/2/4)であった. 6例中4例が予定量の治療を完遂できなかった. 6例中2例が血液毒性のためvinorelbine減量を必要とした. 【結語】手術症例数は多かったが, 実際に術後補助化学療法を行った症例は少なかった. その原因として, プラチナ製剤を含む化学療法が投与不可能な高齢者, 心腎機能低下症例が多いことが考えられた. 【考察】プラチナベースの術後補助化学療法の有効性は, ほぼ確立されたものと考えられる. 今後, より安全で有効なレジメンの確立が望まれる.
ISSN:1343-2826