5. カリニ肺炎と思われる1例

カリニ肺炎は本来, 先天性免疫不全患者, 長期にわたり免疫抑制療法を受けている悪性腫瘍患者や臓器移植患者にみられる稀有な疾患であるが, 近年はAIDSに合併する重篤な肺感染症として注目されている. 我々は, 33歳女性に発症したカリニ肺炎と思われる1例を経験したので報告する. 我々の症例は33歳女性, タイ国籍のバーホステスであり, 発熱, 咳嗽, 呼吸困難で入院した. 入院時胸部X線で両肺野にび漫性の細粒状影と一部小粋状影を認め, 動脈血酸素分圧36.3mmHgと著明な低酸素血症を呈した. HIV抗体はEIA法, W-B法共に明らかに陽性でHIV-1の感染と考えられた. またリンパ球CD4陽...

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Veröffentlicht in:The KITAKANTO Medical Journal 1999, Vol.49 (6), p.482-483
Hauptverfasser: 渡辺康一, 大沢雄二郎, 小林節雄, 荻原裕之, 伝田吉平, 山田正信, 佐藤哲郎, 小沢厚志
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:カリニ肺炎は本来, 先天性免疫不全患者, 長期にわたり免疫抑制療法を受けている悪性腫瘍患者や臓器移植患者にみられる稀有な疾患であるが, 近年はAIDSに合併する重篤な肺感染症として注目されている. 我々は, 33歳女性に発症したカリニ肺炎と思われる1例を経験したので報告する. 我々の症例は33歳女性, タイ国籍のバーホステスであり, 発熱, 咳嗽, 呼吸困難で入院した. 入院時胸部X線で両肺野にび漫性の細粒状影と一部小粋状影を認め, 動脈血酸素分圧36.3mmHgと著明な低酸素血症を呈した. HIV抗体はEIA法, W-B法共に明らかに陽性でHIV-1の感染と考えられた. またリンパ球CD4陽性細胞は69/mm3, CCD4/CD8比は0.1と共に著明に減少し, 一方マイコプラズマ, サイトメガロウイルス抗体価はいずれも陰性であった. これらの所見からAIDS由来のカリニ肺炎を疑い, 第6病日よりST合剤のバクタを投与, 第9病日よりその補助療法としてプレドニンを併用した. これらの薬剤によって自覚的並びに他覚的所見は改善し, 第32病日に退院した. 本症は発熱を伴う乾性咳嗽と進行性の呼吸困難が特徴とされ, その発症頻度は全AIDS症例の約70~80%である. 胸部X線上典型例ではスリ硝子様陰影, あるいはび漫性の浸潤影を呈し, 血液ガス分析では動脈血酸素分圧が低下する. HIV抗体陽性例でCD4陽性リンパ球200/mm3以下の場合本症が疑われる. 本症の確定診断は気管支肺胞洗浄あるいは経皮的吸引肺生検などの方法で検体を採取し, ライト・ギムザもしくはグロコットなどの方法でカリニ原虫を証明するか, PCR法によってなされる. 本症の治療薬にはST合剤, イセチオン酸ペンタミジンがあり, また中等及至重症例に於いてはステロイド剤の併用が推奨されている.
ISSN:1343-2826