3. パラコート吸入による肺障害の1例

わが国では, パラコートによる服毒死は1980年代半ばまで増加し問題となった為1986年7月以降従来の24%のパラコート製品にかわりジクワット添加の低濃度(7%)パラコート製品が販売されるようになった. 今回我々は, パラコート吸入による肺障害の一例を経験した. 症例は, 47歳男性, 主訴は悪心, 嘔吐, 呼吸困難. 【現病歴】平成8年9月11日, 日中, マスクを着用せず24%のパラコート製品を庭木に噴霧中誤って吸引, 同日悪心, 嘔吐を認めるようになるも放置. 9月13日さらに呼吸困難も認めるようになった. 9月14日症状徐々に増強する為当科受診. 【入院時検査所見】尿中パラコート(+). BUN, Crの著明な増加及び軽度肝障害(GOT, GPTに比して高度のLDH増加)低酸素血症によリパラコート中毒と診断. 直ちに, 血液潅流, 血液透折, メチルプレドニゾロンlgパルス療法施行. 第3病日より人工換気下なるものその後PSL60mgより減量図ったところ呼吸状態一旦軽快. その後第22病日より呼吸状態再度悪化しメチルプレドニゾロンlgパルス療法, PSL増量するも改善せず第33病日死亡. 剖検肺は著明な含気量の減少と重量増大という高度の肺腺維症を認められた. 胸部X-P上からも第15病日ころより間質影が目立つようになりパラコート嚥下時第8回北関東胸部疾患研究会抄録集 と臨床経過に差は認められなかった.