鯨類の豚丹毒菌感染症を考える:特集論文の趣旨説明

1956年, 米国フロリダの水族館で, 世界で最初にバンドウイルカ(Tursiops truncatus)とカスリイルカ(Stenella plagiodon)からErysipelothrix rhusiopathiaeが分離培養された. 日本では1960年の江ノ島水族館におけるバンドウイルカ, ハナゴンドウ(Grampus griseus)とカマイルカ(Lagenorhynchus obliquidens)の豚丹毒菌の集団感染が初記録である. 現在でも国内の水族館では依然としてこの感染症による数頭の死亡事例が確認される年がある. 最近では, 野生からの新規イルカの導入は困難になりつつあり,...

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Veröffentlicht in:日本野生動物医学会誌 2019/12/20, Vol.24(4), pp.127-127
Hauptverfasser: 寺沢, 文男, 山本, 桂子, 片岡, 康
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:1956年, 米国フロリダの水族館で, 世界で最初にバンドウイルカ(Tursiops truncatus)とカスリイルカ(Stenella plagiodon)からErysipelothrix rhusiopathiaeが分離培養された. 日本では1960年の江ノ島水族館におけるバンドウイルカ, ハナゴンドウ(Grampus griseus)とカマイルカ(Lagenorhynchus obliquidens)の豚丹毒菌の集団感染が初記録である. 現在でも国内の水族館では依然としてこの感染症による数頭の死亡事例が確認される年がある. 最近では, 野生からの新規イルカの導入は困難になりつつあり, さらに豚丹毒起因菌は 人獣共通感染症の一つとされているが, イルカによる来館者への触れ合い体験プログラムも各施設で実施されている状況を踏まえると本疾病を予防対策することが非常に重要である. そこで今回, 水族館の豚丹毒菌感染症の予防対策の一助として本特集を企画した. まず, 2名の微生物学的専門家から豚丹毒菌の概要, 微生物学的特徴, 診断を含めた最新の知見を紹介する. また, イルカの飼育施設から5名の獣医師による飼育現場の現状と実施されている対策事例を提示する. 本特集は2018年8月31日(金)から9月2日(日), 大阪府立大学りんくうキャンパスで開催された第24回日本野生動物医学会大会の中の自由集会「鯨類の豚丹毒菌感染症を考える」(9月1日)の講演に基づくもので, 本特集論文は以下の7編の総説より構成されている. 1. 豚丹毒菌とはどういう微生物か? 下地善弘(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生部門, 東京理科大学生命医科学研究所) 2. 豚丹毒の予防を考える-豚丹毒予防事業について- 片岡康(日本獣医生命科学大学獣医学部獣医微生物学研究室) 3. 横浜・八景島シーパラダイスにおける豚丹毒症対策の現状 大津大, 大坪裕美(横浜・八景島シーパラダイス) 4. オキナワマリンリサーチセンターにおける豚丹毒の発生状況および現状報告 山本桂子(株式会社オキナワマリンリサーチセンター) 5. アドベンチャーワールドにおける豚丹毒菌感染症の予防について 尾崎美樹(アドベンチャーワールド) 6. 下関市立しものせき水族館における鯨類の豚丹毒菌症と餌の管理 進藤英朗, 鍬崎賢三, 立川利幸(下関市立しものせき水族館「海響館」) 7. 新江ノ島水族館における豚丹毒菌感染症の現状と対策 寺沢文男, 白形知佳, 島森麻衣(新江ノ島水族館) 本特集が日本の飼育下鯨類における豚丹毒菌感染症を抑制する一助になることを期待する.
ISSN:1342-6133
2185-744X
DOI:10.5686/jjzwm.24.127