2. 臍帯炎を伴う臍ヘルニアの整復例について
「はじめに」子牛の臍疾患は臨床現場で多く遭遇する疾患のひとつであり, 臍ヘルニア, 臍帯遺残構造の感染症, あるいはそれらの合併症に分類される. 臍ヘルニアは先天性あるいは後天性に発現し, ヘルニア輪の小さいものは自然にまたは腹帯により治癒すると言われている. しかし, ヘルニア輪が著しく大きいものや, 感染が認められるもの等は外科的な治療が必要である. ヘルニア輪の大きな牛の臍ヘルニア整復術には癒着や感染などが確認出来るヘルニア嚢切除法が適当であるが, この方法では腹圧の増大等により, 縫合部位の筋や組織の断裂, 縫合糸の離開を生じ腹壁ヘルニアとなるおそれがあるのでより強固な結合が必要とされ...
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Veröffentlicht in: | 日本家畜臨床学会誌 2008, Vol.31 (2), p.74-75 |
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Hauptverfasser: | , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 「はじめに」子牛の臍疾患は臨床現場で多く遭遇する疾患のひとつであり, 臍ヘルニア, 臍帯遺残構造の感染症, あるいはそれらの合併症に分類される. 臍ヘルニアは先天性あるいは後天性に発現し, ヘルニア輪の小さいものは自然にまたは腹帯により治癒すると言われている. しかし, ヘルニア輪が著しく大きいものや, 感染が認められるもの等は外科的な治療が必要である. ヘルニア輪の大きな牛の臍ヘルニア整復術には癒着や感染などが確認出来るヘルニア嚢切除法が適当であるが, この方法では腹圧の増大等により, 縫合部位の筋や組織の断裂, 縫合糸の離開を生じ腹壁ヘルニアとなるおそれがあるのでより強固な結合が必要とされる. 今回, 臍帯炎を伴う臍ヘルニア罹患が疑われ結合組織が増生した症例に遭遇し, 結合組織除去手術を実施した. しかし, 結合組織が増生し, 再発したので, 外科的処置にて完全除去し, 水平マットレス縫合で閉鎖固定した. これにより再発せず経過したので報告する. 「材料および経過」罹患牛:ホルスタイン種 雌 H19.2.21生 未経産 体重:約220kg 経過:臍帯部硬結, 腫脹, 結合組織の固まりで円柱様に腹部から地面までぶら下がる(長さ約25cm, 直径約15cm). 育成パドックにて地面と擦れ臍先端部を裂傷し, 結合組織等内容物が露出し炎症する. 仰臥位保定, 鎮静状態で結合組織除去. 臍ヘルニアおよびヘルニア輪等は確認できず, 皮膚の整形縫合(巾着縫合)を行う. しかし1ヶ月後に臍帯部再度硬結, 腫脹, 結合組織の円柱が再形成(長さ12cm, 直径12cm). 再度除去手術を実施. 仰臥保定, 鎮静状態で今回は臍根元部分まで結合組織を完全除去. ヘルニア輪を確認. ダブルの水平マットレスで縫合し閉腹. 抜糸. 罹患牛元気食欲問題なし. その後再発を見ず, 現在に至る. 「考察」初診時は結合組織を可能な限り除去したが, ヘルニア輪は確認出来ず臍ヘルニアではないと診断し, 術部の状態から巾着縫合でも可能と判断し縫合した. 実際は結合組織の完全除去に至らず, ヘルニア輪が存在したと推測され, 結果的に結合組織が増生し再発したと考えられる. 臍ヘルニア等で腹圧がかかる場合には巾着縫合では不十分だと考える. 再発時は結合組織を完全除去し, ヘルニア輪を確認出来たため, 水平マットレス縫合を実施した. これにより再発せず完治したと思われる. 水平マットレス縫合は以前よりヘルニアの縫合法として一般的に用いられていた方法であり, 今症例でも対応した結果, 腹圧がかかる月齢でも十分適応できると考えられた. しかし, 近年ではVest-over-Pants縫合がより良い方法として提案されているので, 次に機会があれば実施してみたい. |
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ISSN: | 1346-8464 |