11.乳牛の分娩前後におけるルーメン環境の変化と血液および乳汁の推移

「1. はじめに」 乾乳期の乳牛は粗飼料中心の飼料で飼養され, 分娩後は乳生産のため, 濃厚飼料を増給することでエネルギーを充足させる. この分娩前後における飼料の変化によってルーメン環境は大きく変化し, それが代謝病の発生や生産性低下の要因となっている. 本試験では分娩前後におけるルーメン環境の変化と, それによる血液および乳汁成分の変化を検討した. 2. 材料および方法 Total Mixed Rations(TMR)を給与しているフリーストール2牛群から臨床的に健康な牛を抽出し, 乾乳前1週間, 乾乳後1週間, 乾乳中期, 分娩予定日前1週間, 分娩後1, 2, 3, 4, 8週間の計9...

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Veröffentlicht in:日本家畜臨床学会誌 2001, Vol.24 (2), p.67-67
Hauptverfasser: 西森一浩, 石川敦洋, 岡田珠子, 高畑幸子, 深谷敦子, 白石俊哉, 信戸一利, 岡田啓司, 安田準
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「1. はじめに」 乾乳期の乳牛は粗飼料中心の飼料で飼養され, 分娩後は乳生産のため, 濃厚飼料を増給することでエネルギーを充足させる. この分娩前後における飼料の変化によってルーメン環境は大きく変化し, それが代謝病の発生や生産性低下の要因となっている. 本試験では分娩前後におけるルーメン環境の変化と, それによる血液および乳汁成分の変化を検討した. 2. 材料および方法 Total Mixed Rations(TMR)を給与しているフリーストール2牛群から臨床的に健康な牛を抽出し, 乾乳前1週間, 乾乳後1週間, 乾乳中期, 分娩予定日前1週間, 分娩後1, 2, 3, 4, 8週間の計9回, 血液, ルーメン液の採取を行った. また, 分娩後の各採材日の朝夕2回, 乳汁の採取を行った. 給与飼料の粗濃比は, A群の泌乳後期66%, 乾乳期91%, 泌乳初期50%, B群の泌乳期60%, 乾乳期80%であった. ルーメン液はアンモニア, 乳酸, pH, ルーメン原虫の運動性, 原虫数, 血液はアンモニア, 乳酸, 血中尿素窒素(BUN), βヒドロキシ酪酸(BHB)等の濃度, 乳汁は乳量, 乳脂率, 乳蛋白率, 無脂固形率, 乳糖率, 体細胞数を測定した. 3. 結果 ルーメン:A群, B群ともアンモニアが乾乳期に増加し, 分娩予定日前1週間にA群はB群に比べて高値を示した. A群のpHは分娩後, 低値で安定して推移したが, B群は分娩前後で変化が見られなかった. A群のルーメン原虫は大型オフリオスコレックス(Oph)が分娩後に消失したが, B群では分娩後に増加した. 中型および小型Oph数はA群では泌乳期に増加したが, B群では変化が見られなかった. 血液:BUNおよびアンモニアがA群, B群とも乾乳期に増加し泌乳期に減少する傾向が見られた. 特にBUNは分娩予定日前1週間~分娩後2週間にA群がB群より高値で推移した. FFAはA群が分娩予定日前1週間に高値を示し, B群では分娩後1週間に高値を示した. 乳汁:乳脂率はA群がB群に比べ低値を示したが, その他の成分に大きな差異は認められなかった. 4. 考察 乾乳期にルーメン中のアンモニアが増加するのは濃厚飼料の不足によりルーメン原虫が減少し, ルーメン内に発生するアンモニアが代謝しきれないためと考えられた. その結果として血中アンモニアおよびBUNが変化したものと考えられた. A群のルーメンや血液の測定項目はB群に比べて変化が大きかった. その原因は乾乳期と泌乳期のA群の粗濃比を中心とする飼料成分の変動が大きかったためと考えられた.
ISSN:1346-8464