52. 転写因子STAT5をバイオマーカーとした化学物質曝露の評価

ホルムアルデヒド(EA)は未だ新築の建物等から非常に高濃度で検出される室内環境化学物質である. またタバコの煙などにも含まれており, 分煙が進んだとはいえ受動喫煙の問題は未だに社会問題である. EAは生体反応, 特に免疫反応の修飾因子として疑われている物質であるが, これらが関与している疾患などについては未だ十分な情報がないのが現状である. この観点より昨年度の重点研究において, 室内環境化学物質の生体影響を解析し, 動物モデルの確立とバイオマーカーの候補としてSTAT5の可能性を提唱した. 本年度はこの結果を応用し, 曝露時期を幼児期, 胎児期に行い, STAT5を中心とした生体影響を解析す...

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Veröffentlicht in:JOURNAL OF UOEH 2011-03, Vol.33 (1), p.118-118
Hauptverfasser: 吉田安宏, 一瀬豊日, 丁寧, 欅田尚樹
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:ホルムアルデヒド(EA)は未だ新築の建物等から非常に高濃度で検出される室内環境化学物質である. またタバコの煙などにも含まれており, 分煙が進んだとはいえ受動喫煙の問題は未だに社会問題である. EAは生体反応, 特に免疫反応の修飾因子として疑われている物質であるが, これらが関与している疾患などについては未だ十分な情報がないのが現状である. この観点より昨年度の重点研究において, 室内環境化学物質の生体影響を解析し, 動物モデルの確立とバイオマーカーの候補としてSTAT5の可能性を提唱した. 本年度はこの結果を応用し, 曝露時期を幼児期, 胎児期に行い, STAT5を中心とした生体影響を解析する研究課題に取り組んだ. 本研究課題では, 幼児期, 胎児期における低濃度FA全身曝露のモデルマウスを作成し, リンパ組織から細胞を調製し, 細胞内の変化として転写因子に焦点を当て解析した. 幼児期曝露モデルマウスでは細胞表面や脾臓細胞のサイトカイン産生に影響は認められなかったものの, 胸腺細胞からのIL-2産生および細胞内の転写因子STAT5の活性化が観察された. 胎児期曝露モデルマウスでは生後0~1日目に採取した胸腺細胞においてもSTAT5の活性化が観察された. 胎児期に曝露を受けたマウスは, その後正常空気下で4週間生育させた後でも胸腺細胞においてSTAT5の活性化が観察された. このことは胎児期曝露の影響が持続されていることを示唆している. 以上の結果から低濃度FAの曝露は免疫担当細胞の活性化を引き起こすことが示され, 特に転写因子であるSTAT5の活性化を誘導することが分かった. 従ってSTAT5が曝露の有効なバイオマーカーと成りうるのではと考えられた. しかしながら, STAT5の活性化が病態, 或いは全身症状としてどのように関与しているのかは未だ不明である. 今後はこの点に焦点を当てた研究を行っていきたい.
ISSN:0387-821X