40. アセトアルデヒド吸入曝露によりアルデヒド脱水素酵素2ノックアウトマウス臓器におけるDNA付加体数は上昇する
【目的】アセトアルデヒド(AA)の代謝酵素として重要なアルデヒド脱水素酵素(ALDH)2遺伝子(ALDH2)には, 酵素多型(変異型)を認める. 日本人の約半数を占めるこの変異型ALDH2遺伝子ヘテロやホモ接合体ではALDH2が不活性化している(ALDH2不活性型). ALDH2不活性型の人は飲酒するとフラッシング反応を示し, 食道癌や口腔・咽頭癌も有意に発症している. しかし, ALDH2不活性型とALDH2活性型の人のAA感受性の差は明らかにされていない. 一方, アセトアルデヒドのDNA障害のマーカーとして, N2-ethyl-deoxyguanosine (N2-Et-dG), met...
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Veröffentlicht in: | JOURNAL OF UOEH 2010-03, Vol.32 (1), p.120-120 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 【目的】アセトアルデヒド(AA)の代謝酵素として重要なアルデヒド脱水素酵素(ALDH)2遺伝子(ALDH2)には, 酵素多型(変異型)を認める. 日本人の約半数を占めるこの変異型ALDH2遺伝子ヘテロやホモ接合体ではALDH2が不活性化している(ALDH2不活性型). ALDH2不活性型の人は飲酒するとフラッシング反応を示し, 食道癌や口腔・咽頭癌も有意に発症している. しかし, ALDH2不活性型とALDH2活性型の人のAA感受性の差は明らかにされていない. 一方, アセトアルデヒドのDNA障害のマーカーとして, N2-ethyl-deoxyguanosine (N2-Et-dG), methyl-hydroxy-1,N2-propano-deoxyguanosine(Me-OH-PdG), N2-ethylidene-deoxyguanosine(N2-ethylidene-dG)などが知られているが, このうちDNAに還元剤を曝露して得られるN2-Et-dGが最も高感度なDNA障害の指標となると推定されている. 今回, AA吸入曝露(全身曝露)を行い, アルデヒド脱水素酵素(Aldh)2 ノックアウトマウス(Aldh2-/-)と野生型マウス(C57BL/6;Aldh2+/+)の肝・鼻粘膜・肺・背部表皮におけるDNAに含まれるN2-Et-dG数を検討した. 【対象・方法】10週齢の雄マウス(Aldh2+/+・Aldh2-/-)をそれぞれ2週間チャンバー内で飼育してAA吸入曝露実験を行い, AA曝露濃度によって次の群を作成した. 1)コントロール群(平均曝露0ppm), 2)AA125ppm曝露群(平均曝露126.3ppm), 3)AA500ppm曝露群(平均曝露510.5ppm). LC/MS/MSを用いてこれらのマウスの肝・鼻粘膜・肺・背部表皮のN2-Et-dG数を検討した. 【結果】AA2週間曝露後の肝において, コントロール群に比べ125ppm曝露群や500ppm曝露群では10 8個の塩基あたりのN2-Et-dG数はAldh2+/+とAldh2-/-いずれも高値傾向を示していたが, 酵素多型による明らかな差は認めなかった. AA2週間曝露後の鼻粘膜において, 125ppm曝露群ではAldh2-/-(n=3)のN2-Et-dGは10 8個の塩基あたり580.7個認め, Aldh2+/+(n=3)の192.6個に比べ有意に高値を示した(p=0.02). AA2週間曝露後の肺において, 125ppm曝露群ではAldh2-/-(n=6)のN2-Et-dGは10 8個の塩基あたり68.0個認め, Aldh2+/+(n=6)の53.1個に比べ有意に高値を示した(p=0.04). AA2週間曝露後の肺において, 500ppm曝露群でもAldh2-/-(n=5)のN2-Et-dGは10 8個の塩基あたり263.2個認め, Aldh2+/+(n=6)の171.2個に比べ有意に高値を示した(p=0.03). AA2週間曝露後の背部表皮において, 500ppm曝露群ではAldh2-/-(n=10)のN2-Et-dGは10 8個の塩基あたり121.9個認め, Aldh2+/+(n=6)の48.6個に比べ有意に高値を示した(p=0.01). 【考察】アセトアルデヒドを吸入した場合, アセトアルデヒドが同じ濃度であってもALDH2活性型に比べALDH2不活性型の人(日本人の約半数)は, 鼻粘膜・肺・背部表皮においてDNA付加体数が増加し, 悪性腫瘍を発症しやすい可能性が示された. |
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ISSN: | 0387-821X |