27. アルコール性心筋症の発生メカニズム

アルコール性心筋症は長期間の大量飲酒後に発生する拡張性心筋症類似の疾患といわれ, アルコールによる中毒性心筋症と考えられているが, その発生メカニズムはまだ明らかにされていない. 近年, アルコール性臓器障害発生のメカニズムとして菌体毒素(LPS)の果たす役割が注目されている. 今回LPSの心臓に与える影響を検討した. 実験動物としてWistarラットを用い, 以下の実験を行った. アルコールは餌とともに12.0mg/g摂取させた. LPSは1.0μg/g, 対照として蒸溜水を皮下注射した. 第一群(対照群), 第二群(LPS群), 第三群(アルコール群)および第四群(アルコール+LPS群)の...

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Veröffentlicht in:JOURNAL OF UOEH 1997-03, Vol.19 (1), p.87-87
Hauptverfasser: 田中敏子, 北敏郎, 笠井謙多郎, 田中宣幸
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:アルコール性心筋症は長期間の大量飲酒後に発生する拡張性心筋症類似の疾患といわれ, アルコールによる中毒性心筋症と考えられているが, その発生メカニズムはまだ明らかにされていない. 近年, アルコール性臓器障害発生のメカニズムとして菌体毒素(LPS)の果たす役割が注目されている. 今回LPSの心臓に与える影響を検討した. 実験動物としてWistarラットを用い, 以下の実験を行った. アルコールは餌とともに12.0mg/g摂取させた. LPSは1.0μg/g, 対照として蒸溜水を皮下注射した. 第一群(対照群), 第二群(LPS群), 第三群(アルコール群)および第四群(アルコール+LPS群)の4群とし, 10週間投与実験を行い, 形態学的変化およびTNFαの局在を観察した. 結果考察:アルコール単独10週間投与では心筋障害は観察されなかった. しかし, LPS投与群(LPS群およびLPS+アルコール群)には種々の心筋障害像が認められた. LPS群とアルコール+LPS群とを比較してみると, 心筋の組織学的変化のパターンは同じであるが, アルコール+LPS群の方がLPS群と比較して著明にアルコール性心筋症に認められる特徴ある組織変化が認められた. アルコールを摂取しかつエンドトキシン(LPS)が一定量あれば, 心筋障害が生じることが明らかとなった. この所見はアルコール心筋障害発生メカニズムにおけるエンドトキシンの果たす重要性を示していると考えられる. 通常, 腸管の大腸菌由来の微量のLPSが門脈経由で肝臓に運ばれ, これをクッパー細胞が貧食し無毒化している. ところがアルコールを多飲することによりクッパー細胞の貧食能低下が生じ, 結果的にLPSが全身に循環しエンドトキシン血症となり心筋障害が生じる可能性が示唆された. またTNFαが心筋障害を起こした心筋細胞内に認められており, 今後TNFαのアルコール性心筋障害発生において果たす役割の検討も必要である.
ISSN:0387-821X