バンコマイシンTDM 解析ソフトPAT とMEEK との予測性に関する検討
【背景・目的】バンコマイシン(VCM)は,その有効性や副作用の回避のために,適切な治療濃度域での使用が求められており,治療薬物モニタリング(TDM)を行うことが望ましいとされている.VCM のTDM の指標として血中濃度-時間曲線下面積(AUC)/ 最小発育阻止濃度(MIC)が有用なパラメーターとして報告されているが,AUC 算出には数ポイントの採血を要するため,最低血中濃度(トラフ値)を代替指標として使用してきた経緯がある.しかし,近年では,母集団パラメーターを基にベイズ推定を行う解析ソフトの普及で,1 点の採血でもAUC 算出が可能となり,日本化学療法学会が,解析ソフトとしてPAT を推奨...
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Veröffentlicht in: | 天理医学紀要 2023/12/25, Vol.26(2), pp.117-117 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Schlagworte: | |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 【背景・目的】バンコマイシン(VCM)は,その有効性や副作用の回避のために,適切な治療濃度域での使用が求められており,治療薬物モニタリング(TDM)を行うことが望ましいとされている.VCM のTDM の指標として血中濃度-時間曲線下面積(AUC)/ 最小発育阻止濃度(MIC)が有用なパラメーターとして報告されているが,AUC 算出には数ポイントの採血を要するため,最低血中濃度(トラフ値)を代替指標として使用してきた経緯がある.しかし,近年では,母集団パラメーターを基にベイズ推定を行う解析ソフトの普及で,1 点の採血でもAUC 算出が可能となり,日本化学療法学会が,解析ソフトとしてPAT を推奨するようになった.しかし,当院では,Meiji Seika ファルマから提供を受けたMEEK を使用しており,PAT とMEEK では,その予測性が異なる可能性が考えられる.そこで,今回我々は,PAT とMEEK から算出されるトラフ値とAUC の予測性について検討した.【方法】対象患者は,2020 年4 月から2021 年3 月までに,当院にてVCM による治療が行われVCM 濃度測定が2 回以上実施された患者のうち,以下の除外基準に該当しない患者とした.除外基準は,透析,小児,心臓血管外科,トラフ値以外の採血,評価期間中に腎機能が変動した患者である.予測性の評価は,初回の測定値から,各ソフトにて患者の薬物動態パラメーターを求め,これを基に算出した推定トラフ値,推定AUC と2 回目の血中濃度測定で得られた実測値,この値から求めた実測AUC を用いて推定値/ 実測値比,mean prediction error (ME), mean absolute prediction error (MAE), root mean squared error (RMSE) を求め,比較した.【結果・考察】対象患者は,32 例(男性22 例,女性10 例),年齢:75 ± 14 歳(平均± 標準偏差),体重:55.1 ± 14.7 kg,血清クレアチニン値:0.9 ± 0.6 mg/dL であった.トラフ値では,MEEK の推定値/ 実測値比は,中央値0.96 (四分位範囲0.87–1.27),PAT では,0.77 (0.65–0.90) となった.また,MEEK,PAT のME は,−0.08, −3.53,MAE は, 3.39,3.86,RMSE は,4.08, 4.60 となり,PAT の推定値/ 実測値比,ME の誤差は−20% を超えた.AUC では,推定 値/ 実測値比は,MEEK が0.99 (0.90–1.08),PAT が0.91 (0.88–0.98) となり,ともに10% 以内の誤差に留まった.以上の結果から,AUC を用いて投与設計する場合は,MEEK,PAT ともに良好な予測精度が得られるが,トラフ値での評価も欠くことができない状況では,MEEK を用いて解析を行う方が望ましいと考える. |
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ISSN: | 1344-1817 2187-2244 |
DOI: | 10.12936/tenrikiyo.26-018 |