排尿機能・排尿障害の診療
排尿障害のうち,夜間頻尿は男女ともに最も多くの人が訴える症状である.夜間頻尿とは夜間に排尿のために少なくとも1 回以上起きなければならないという状態を指し,かつそれを煩わしいと感じている状態である.日本における40 歳以上の人を対象とした疫学調査にて,夜間排尿回数1 回以上が69.2%,3 回以上が13.5% と報告されており,高齢になるにつれその割合は上昇する.夜間頻尿の病因としてこれまで夜間の膀胱の畜尿障害,夜間多尿,および睡眠障害が挙げられており,これらが複合的に影響しているケースも多い.原因毎の治療法はある程度確立されており,夜間頻尿診療ガイドライン(日本排尿機能学会編)において診療ア...
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Veröffentlicht in: | 天理医学紀要 2021/12/25, Vol.24(2), pp.117-117 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Schlagworte: | |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 排尿障害のうち,夜間頻尿は男女ともに最も多くの人が訴える症状である.夜間頻尿とは夜間に排尿のために少なくとも1 回以上起きなければならないという状態を指し,かつそれを煩わしいと感じている状態である.日本における40 歳以上の人を対象とした疫学調査にて,夜間排尿回数1 回以上が69.2%,3 回以上が13.5% と報告されており,高齢になるにつれその割合は上昇する.夜間頻尿の病因としてこれまで夜間の膀胱の畜尿障害,夜間多尿,および睡眠障害が挙げられており,これらが複合的に影響しているケースも多い.原因毎の治療法はある程度確立されており,夜間頻尿診療ガイドライン(日本排尿機能学会編)において診療アルゴリズムが公開されている.今回,これらの治療について概説する.しかしながら,ガイドラインに沿った治療を行った場合においても難治性の症例は一定の割合でみられ,まだ未解明の夜間頻尿の病態,病因があることが示唆される. その一端を解明するためのアプローチとして,近年,概日リズムに着目した基礎研究が進められており,新たな知見が得られてきている.視交叉上核にある中枢時計が末梢の各臓器に存在する末梢時計を調律することで体全体の概日リズムが形成されている.尿の産生量が夜間に低下することや畜尿量が夜間に増大することが知られていたが,これらは腎臓および膀胱の概日時計による調整機能が働いていることによるものであることが明らかとなってきた.すなわち,高齢者では概日リズムの破綻により本来尿の産生が低下し,畜尿量が増大すべき夜間に尿産生量が低下せず,畜尿量が増大しないため,夜間頻尿が増悪する原因となっている可能性が考えられている.これらのことから腎臓で尿産生に関与し日内変動する分子をターゲットとする新たな創薬が期待される.一方,膀胱ではギャップジャンクションの構成タンパクの1 つであるコネキシン43 が日内変動し,時計遺伝子の制御下にあることが近年報告され,ギャップジャンクションの阻害薬が新規の治療薬となりうる. また,概日時計と夜間頻尿の関連を一元的に考えると,末梢臓器をコントロールする中枢時計のリズムが崩れるとその結果として夜間頻尿という症状がみられるという考え方も可能である.疫学的に夜間頻尿は高血圧,心疾患,糖尿病,脳血管障害,うつ病といった全身疾患が危険因子とされており,これらの因子は概日リズムとの関連が明らかになってきている.概日リズムを通した視点により個別にとらえられていた病態を根本的に突き止められる可能性があり,今後さらに研究が進むことが望まれる. |
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ISSN: | 1344-1817 2187-2244 |
DOI: | 10.12936/tenrikiyo.24-014 |