発作性夜間ヘモグロビン尿症に合併した脾梗塞の抗凝固療法中に複数の血栓症を続発した1例

「和文抄録」症例は60歳, 男性. X年に溶血所見を伴う汎血球減少を指摘された. 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)型血球の存在とdel(13q)異常があり, 骨髄異形成症候群を合併したPNHと診断された. X+2年より感染症の合併を契機に溶血発作を繰り返して輸血依存にもなったため, eculizumab療法が導入されたが, 溶血阻止効果が10日間しか持続せず輸血依存は脱しなかった. X+6年にravulizumab療法に変更されて血管内溶血阻止効果は得られ, 一時輸血依存を脱したが, 次第に血管外溶血が顕在化して再び輸血依存状態となった. X+7年12月に急な発熱, 倦怠感, 左上腹部痛が...

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Veröffentlicht in:山口医学 2024-03, Vol.73 (1), p.33-38
Hauptverfasser: 藤岡侑香, 梶邑泰子, 酒井康平, 廣重俊典, 能野翔太, 松村卓郎, 富永貴元, 高橋徹
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「和文抄録」症例は60歳, 男性. X年に溶血所見を伴う汎血球減少を指摘された. 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)型血球の存在とdel(13q)異常があり, 骨髄異形成症候群を合併したPNHと診断された. X+2年より感染症の合併を契機に溶血発作を繰り返して輸血依存にもなったため, eculizumab療法が導入されたが, 溶血阻止効果が10日間しか持続せず輸血依存は脱しなかった. X+6年にravulizumab療法に変更されて血管内溶血阻止効果は得られ, 一時輸血依存を脱したが, 次第に血管外溶血が顕在化して再び輸血依存状態となった. X+7年12月に急な発熱, 倦怠感, 左上腹部痛が出現し, 脾梗塞を発症したため, 未分画ヘパリン(UFH)による抗凝固療法がなされ, 引き続いてapixabanが投与された. 約1ヵ月後に鎮痛薬乱用による急性腎障害をきたして再入院となった際に, 脾梗塞巣の拡大がみられたため抗凝固薬がapixabanからUFHに再変更されたところ, その2日後に心筋梗塞, 次いで腎梗塞を併発した. ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を疑いUFHはargatrobanに変更されたが, さらに脳梗塞を続発して死亡の転帰となった. 初回UFH投与中に血小板数が低下した経緯やUFH再投与後に血栓症が生じた経過があり, HIT抗体が弱陽性値であったことから, 続発した多発血栓症がHITの合併であった可能性も考えられた. PNHの臨床経過でよくみられる血栓症に対する抗凝固療法ではUFHが頻用されるが, 血小板減少や血栓症の続発がある場合にはHITの合併にも留意すべきである.
ISSN:0513-1731