8. ICU症候群を予測するためのアセスメントスケールを導入して―日本語版ニーチャム混乱・錯乱スケールを使用したリスク評価

平成14年度の当院ICU入室患者のうち約38%(910名中349名)が緊急入室患者であり, またICUインシデントのうちの約21%はICU症候群を伴うことから発生していた. そこで入室時にICU症候群に陥るリスクをアセスメントすることで, ICU症候群になるのを防ぐことができないかと考えた. ニーチャム混乱錯乱スケール(以下ニーチャムスケールと略す)がせん妄のリスクアセスメントスケールとして有効であることから, ICU症候群のリスクアセスメントスケールとしても有効であるのではないかと考え検証していった. 当院ICUの背景を分析し, リスクアセスメントの標準化ができたのでここに報告する. I研究...

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Veröffentlicht in:山口医学 2005-08, Vol.54 (4), p.129-130
Hauptverfasser: 十時良子, 金田由美子, 重枝佳代子, 原中恵子, 棟近由利子, 天川明美
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:平成14年度の当院ICU入室患者のうち約38%(910名中349名)が緊急入室患者であり, またICUインシデントのうちの約21%はICU症候群を伴うことから発生していた. そこで入室時にICU症候群に陥るリスクをアセスメントすることで, ICU症候群になるのを防ぐことができないかと考えた. ニーチャム混乱錯乱スケール(以下ニーチャムスケールと略す)がせん妄のリスクアセスメントスケールとして有効であることから, ICU症候群のリスクアセスメントスケールとしても有効であるのではないかと考え検証していった. 当院ICUの背景を分析し, リスクアセスメントの標準化ができたのでここに報告する. I研究方法 1)研究期間 平成15年5月1日~平成15年9月30日2)研究対象 *ICU緊急入室患者46人*入室時, 在室3日目, 在室1週間目に日本語版ニーチャム混乱, 錯乱スケールを使用する. (小児科, 心肺停止患者, 意識障害の認める患者は除く)*挿管中, 鎮静中の患者に対しては, 抜管, 鎮静終了後1日目にスケールを行う. 3)研究方法 リスクアセスメントスケールとしてニーチャムスケールを使用し, 得点とICU症候群の原因(年齢, 性別, 環境, 入室時間帯), 発生率の関係を明らかにする調査研究. II仮説, 結果 仮説:ニーチャムスケールで, 合計点数が26点以下(発症の危険性が高い状態)の患者はICU症候群の発生率が高い. 結果:ニーチャムスケールにおいて, 26点以下のICU症候群発生率者7名(87.5%). 27点以上でのICU症候群発生率者1名(12.5%)であった. 対象者全体での割合は, 26点以下7名/30名=23%, 27点以上1名/16名=6.2%. したがって, ニーチャムスケールの合計点数が26点以下の患者は, 27点以上の患者に比べてICU症候群の発生率が高い. III考察, 結論 今回ニーチャムスケールがICU症候群のリスクアセスメントスケールとして有効であることを検証した. 入室後の得点の変化をみるために入室時, 3日目, 1週間目にもスケールを行うようにした. また, ICU内環境についてICU症候群が出現しやすい状況には特徴的な因子があるのか分析した. その結果(1)入室は60, 70歳代が30人と多く全体の66%, それに比例してICU症候群の発生者も60~70歳代が多かった. (2)在日平均日数は31日であり, ICU症候群の発生日も2, 3日目が61%を占めていた. (3)男女別に見ると男性の入室が多かったが, 発症率は女性が多かった. 発症比率は男13%:女26%であった. (4)入室時間帯は8:30~17:00, 17:30~8:30にわけて行ったが昼夜50%ずつの入室比率であり, 昼夜の差の関連性はなかった. (5)ICUは, 現在横一列ならびの6ベットあり中央の2~4ベッドは, センターテーブルに近く音が常にしているためICU症候群になりやすいと考えたが, ベッドの位置によるICU症候群の発症率との関連性はなく, ICU全体に音, 人の気配が常にある状況であるという結果であった. (6)スケールの項目について当ICUでの傾向もふまえてICU症候群に陥る原因として考えてみるとニーチャムスケールの得点の低い患者はICU症候群になりやすい. また得点項目に心理, 生理的なコントロールスケールがあることが, 状態変化の著しいICU患者に適していることがわかった. その結果, 得点化することでいままで経験的な判断に頼る部分が多かったリスクアセスメントを標準化でき, 早期にICU症候群に対する計画が立案できている. IVまとめ 1. ICU症候群のリスクアセスメントツールにニーチャムスケールは有効である2. ICU症候群は, 入室時点で全ての患者に起こりうるリスクを持っている. 3. ICU症候群を防ぐためにも, リスクアセスメントを行い原因を把握し, ナースサイドでの積極的なケアの介入が必要である.
ISSN:0513-1731