ODSラットにおけるアスコルビン酸欠乏による炎症性ケモカイン:cytokine-induced neutrophil chemoattractant-1の肝臓での発現上昇(p.28-32)

我々はアスコルビン酸合成不能のODSラットを用いて, 明らかな壊血病症状が発現する以前の軽度のアスコルビン酸(AsA)欠乏状態において, 肝臓の急性期タンパク質の発現が炎症誘発時と同じように変化していることを見出し, 報告してきた. この現象は, アスコルビン酸欠乏が引き起こす生理的変化としては今まで知られていなかったものである. そこで本研究では, この現象をさらに詳しく把握することを目的として, 炎症時に発現誘導されるケモカインであるcytokine-induced neutrophil chemoattractant-1(CINC-1)の血中および組織濃度と, 組織でのmRNAレベルに対...

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Veröffentlicht in:日本栄養・食糧学会誌 2006, Vol.59 (2), p.161-161
Hauptverfasser: 堀尾文彦, 木山圭一郎, 小林美里, 河合香里, 津田孝範
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:我々はアスコルビン酸合成不能のODSラットを用いて, 明らかな壊血病症状が発現する以前の軽度のアスコルビン酸(AsA)欠乏状態において, 肝臓の急性期タンパク質の発現が炎症誘発時と同じように変化していることを見出し, 報告してきた. この現象は, アスコルビン酸欠乏が引き起こす生理的変化としては今まで知られていなかったものである. そこで本研究では, この現象をさらに詳しく把握することを目的として, 炎症時に発現誘導されるケモカインであるcytokine-induced neutrophil chemoattractant-1(CINC-1)の血中および組織濃度と, 組織でのmRNAレベルに対するAsA欠乏の影響について, ODSラットを用いて検討した. 6週齢の雄性ODSラットに, AsA無添加飼料を与える欠乏群と, AsA添加(300mg/kg)飼料を与える対照群とをもうけて, 14日間飼育した. この間, 欠乏群では明確な壊血病症状は観察されなかったが, 12日目には血中CINC-1濃度の上昇傾向が観察され, 14日目には対照群より有意に高い血中CINC-1濃度が観察された. 14日目では, 欠乏群では対照群に比べて, 肝臓CINC-1濃度は6倍に上昇し, 脾臓では1.8倍に上昇した. しかし, 肺では両群で差はなかった. さらに, 各組織のCINC-1mRNAレベルは, 肝臓においては欠乏群では対照群の4.8倍に上昇しており, 肺では両群間で差はなかった. これらの結果より, ODSラットのAsA欠乏初期において, 炎症誘発時と同様に血中および肝臓と脾臓のCINC-1濃度の明確な上昇が観察された. 血中CINC-1濃度の上昇には肝臓でのCING-1発現の上昇が寄与している可能性が考えられた. そして, AsAは生体内で炎症様変化を抑制する作用を有することが推察された.
ISSN:0287-3516