ピリドキサミンの吸収と代謝(p.341-348)

酵素化学的研究から, ピリドキサミン(PM)はいったんキナーゼでピリドキサミンリン酸(PMP)にリン酸化され, さらにオキシダーゼでピリドキサルリン酸(PLP)に変化するのが主経路とされている. したがってPMを動物に経口投与したときには, 腸管から吸収されたPMは各臓器に取り込まれ, そこで上の二つの酵素でPMPを経てPLPに変化すると推測されてきた. しかし, このような過程は, 生理的な条件で調べられたことはあまりない. この研究では, 生理量の[3H]PMをマウスに経口投与したのち, 各時間で血液ならびに各臓器のB6各型の3H活性を測定した. 血液中には, 予想に反して, [3H]PM...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:日本栄養・食糧学会誌 1991, Vol.44 (6), p.517-517
Hauptverfasser: 桜井多恵, 朝倉正, 水野有武, 松田誠
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:酵素化学的研究から, ピリドキサミン(PM)はいったんキナーゼでピリドキサミンリン酸(PMP)にリン酸化され, さらにオキシダーゼでピリドキサルリン酸(PLP)に変化するのが主経路とされている. したがってPMを動物に経口投与したときには, 腸管から吸収されたPMは各臓器に取り込まれ, そこで上の二つの酵素でPMPを経てPLPに変化すると推測されてきた. しかし, このような過程は, 生理的な条件で調べられたことはあまりない. この研究では, 生理量の[3H]PMをマウスに経口投与したのち, 各時間で血液ならびに各臓器のB6各型の3H活性を測定した. 血液中には, 予想に反して, [3H]PMはまったく認められず, 多量の[3H]PLとそれに次ぐ[3H]PLPが認められるのみであった. そして[3H]PLの大部分は血漿に, [3H]PLPの大部分は血球中に分布していた. このことは, PMは末梢血液に現れる前に, 消化管壁ないし肝において, PMP, PLPを経て完全にPLに変換されて, 血漿中に放出されることを示唆している. 脳では[3H]PLPがゆっくり増加し, [3H]PLも相当量認められた. 脳内の[3H]PLPはおそらく血液に由来した[3H]PLから合成されたものと考えられる. PM吸収時のこのPM→PL変換能を調べるため, 種々量の[3H]PMを経口投与した後, 血液中の各[3H]B6型を分析した. 14nmol/マウスではまだ[3H]PMは現れないが, 46nmol/マウスあたりから[3H]PMが急激に増加した. このことから, PM→PL変換能の臨界量は14-46nmol/マウスにあることがわかった. 以上のことから, これ以下の生理量では, 経口的に与えられたPMは, 消化管ないし肝において完全にPLに変換されて, 血液に現れることが示唆された. したがって, 末梢臓器は(はじめの推測とは違って), PMに遭遇することなく, もっぱらこのPLをPLPの材料として利用しているものと考えられる.
ISSN:0287-3516