乳児栄養指導の問題点

母乳栄養が浸透してきたことは喜ばしい. しかし, 人工栄養も近年育児用ミルクの進歩によって改善されており, 母親の食生活の変化やフォローアップ, ミルク, 市販離乳食品の利用など, 変わってきた乳児栄養指導の実際について, 母乳栄養, 人工栄養, 離乳(フォローアップ, ミルクを含む), 授乳期の母親の食事, 治療乳(先天性代謝異常など特殊なミルクにより治療をしなければならない場合), おのおのの場合の特徴, 問題点について考えてみたい. 1. 母子栄養 栄養効率がよく, 胃腸, 肝臓, 腎臓などの内臓に対する代謝負担が少なく, 感染防御効果があり, 母乳タンパクは非抗原性であり, 心理的効果...

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Veröffentlicht in:日本栄養・食糧学会誌 1984, Vol.37 (1), p.183-184
1. Verfasser: 堀内幸子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:母乳栄養が浸透してきたことは喜ばしい. しかし, 人工栄養も近年育児用ミルクの進歩によって改善されており, 母親の食生活の変化やフォローアップ, ミルク, 市販離乳食品の利用など, 変わってきた乳児栄養指導の実際について, 母乳栄養, 人工栄養, 離乳(フォローアップ, ミルクを含む), 授乳期の母親の食事, 治療乳(先天性代謝異常など特殊なミルクにより治療をしなければならない場合), おのおのの場合の特徴, 問題点について考えてみたい. 1. 母子栄養 栄養効率がよく, 胃腸, 肝臓, 腎臓などの内臓に対する代謝負担が少なく, 感染防御効果があり, 母乳タンパクは非抗原性であり, 心理的効果をあげることができるなどの利点は多いが, これには母親が正しく栄養をとっていることが必要である. 母乳栄養の問題点としては, 母親の飲酒, 喫煙, 服薬, ビタミンK欠乏, 環境汚染(有機塩素農薬, PCB)などがあげられる. これらのことを正しく理解したうえで指導にあたることが重要である. 2. 授乳中の母親の食事 母乳の組成は, 授乳婦の栄養摂取状況によって変動すると考えられており, 必要な栄養素が不足しないよう食事指導(ビタミンK不足にならないよう緑黄色野菜を十分とるなど)するとともに, アルコール, カフェイン, ニコチンや薬剤などの乳中への移行について十分注意する. 3. 人工栄養 人工栄養は, 初めは牛乳を用いていたが, 昭和34年, 特殊調整粉乳の規格が定められ, さらに昭和54年, 調整粉乳として新しい規格が定められた. 調整粉乳には, 育児用粉乳のほかに, 未熟児用粉乳, 離乳期幼児期用粉乳も含まれるようになった. 最近の育児用粉乳は4種あり, 調乳濃度は13%と14%で, 以前のように“ミルクが濃すぎる”, “人工栄養は肥満児をつくる”というようなことはまれになってきた. 人工栄養の場合でも, 自律哺乳能が成熟すれば, 自律授乳が行なわれる傾向にあるが, 授乳法も含めた栄養指導が必要である. 4. 離乳 離乳は乳汁を吸うことから, 食物をかみつぶして飲み込むことへ発達していく過程である. 母乳栄養, 治療乳の場合は, 人工栄養より離乳の開始や完了がおくれる傾向にあるので注意したい. 市販の離乳食品, 離乳期幼児期用粉乳についても指導が必要である. 5. 治療乳 先天性代謝異常や吸収障害には, その患児の特性に合わせた特殊なミルク, 食品を用いることによって栄養を確保し, 正常な発育を期待できる. 各疾患別の多種類の治療乳は, 特殊ミルク共同安全開発事業が発足し, 昭和56年1月より, 原則として登録医療機関を通じて供給するようになったが, 特有な味や臭の特殊ミルク中心の治療食には問題が多い. ミルクを飲まない, 離乳がおくれやすい, 摂取栄養量が不足するなどに対しては, 栄養指導により適正な食事療法を継続できるよう病院栄養士, 小児科医はもちろん, 幼稚園, 保育所, 学校, 保健所, 福祉関係などの栄養士, 保健婦, 養護教諭の協力も必要である. また, 現在の特殊ミルクやアミノ酸治療食の味と臭の改善, 自然タンパクをできるだけ多く与えるための工夫, アミノ酸混合物として摂取する場合の効率など, 今後に残された問題も多い. 現在, 乳児栄養指導は, 病院, 医院, 保健所, ベビー相談室など, おのおのの特微を生かした指導が行なわれている. 若い母親が2か所以上で指導を受けた場合, とまどわないよう, 内容はもちろん, ことばづかいにも配慮が必要である.
ISSN:0287-3516