栄養風土と精神風土
栄養学教室の初代教授(阪大医学部)になった折, 生化学のある先輩から「年を取ると手なぐさみに栄養学をやるようになりますなあ」と皮肉をまじえて言われたことがある. その当時の日本栄養.食糧学会では, 食品栄養学たとえばカロリー計算やビタミン含有量の計測といった内容の話題が多く, 会員も女性の方の比率が高かったので, 温和な雰囲気が漂っていた. 上述の生化学の先輩も, 言ってみれば栄養学は, 婦女子にまかせ, 料理法の延長ぐらいにしか思われなかったかもしれない. ただし, 人の感じ方とその本質とはたいへんな隔りがあるもので, 栄養食糧問題がどのくらい重要であるかがわかるまでには, 時間がかかってい...
Gespeichert in:
Veröffentlicht in: | 日本栄養・食糧学会誌 1983, Vol.36(1), pp.1-3 |
---|---|
1. Verfasser: | |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
Tags: |
Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
|
Zusammenfassung: | 栄養学教室の初代教授(阪大医学部)になった折, 生化学のある先輩から「年を取ると手なぐさみに栄養学をやるようになりますなあ」と皮肉をまじえて言われたことがある. その当時の日本栄養.食糧学会では, 食品栄養学たとえばカロリー計算やビタミン含有量の計測といった内容の話題が多く, 会員も女性の方の比率が高かったので, 温和な雰囲気が漂っていた. 上述の生化学の先輩も, 言ってみれば栄養学は, 婦女子にまかせ, 料理法の延長ぐらいにしか思われなかったかもしれない. ただし, 人の感じ方とその本質とはたいへんな隔りがあるもので, 栄養食糧問題がどのくらい重要であるかがわかるまでには, 時間がかかっている. 現在, 食糧は戦略物資として多くの民族の興亡にも影響を与えかねない. その反面, 米国を中心とする食糧輸出国では, 表土の流出と地下水の枯渇と塩害が大きな問題になってきた. 日本の耕地面積の4倍に当たるくらいの地表が, 年々砂漠化して不毛の地域が拡大しつつある. |
---|---|
ISSN: | 0287-3516 1883-2849 |
DOI: | 10.4327/jsnfs.36.1 |