25. Cushing病と診断されたACTH産生性下垂体腺腫160症例の電顕所見

「背景」: Cushing病は下垂体からACTHが過剰に産生されることにより, 副腎皮質からコルチゾールが過剰に分泌され, 特徴的な身体所見を示す疾患である. その大部分はACTH産生性下垂体腺腫(ACTH腺腫)によるものである. Cushing病を呈するACTH腺腫はホルモン分泌活性が高く, 腫瘍径が小さい微小腺腫(microadenoma)として発見されることが多く, 巨大腺腫(macroadenoma)は少ないとされる. ACTH腺腫は, 電子顕微鏡所見に基づき, 分泌顆粒を多く含むdensely granulated adenoma(DG), 分泌顆粒の少ないsparsely gran...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 2011, Vol.126 (6), p.224-224
Hauptverfasser: 井下尚子, 藤ヶ崎純子, 佐野壽昭, 大橋健一, 山田正三
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:「背景」: Cushing病は下垂体からACTHが過剰に産生されることにより, 副腎皮質からコルチゾールが過剰に分泌され, 特徴的な身体所見を示す疾患である. その大部分はACTH産生性下垂体腺腫(ACTH腺腫)によるものである. Cushing病を呈するACTH腺腫はホルモン分泌活性が高く, 腫瘍径が小さい微小腺腫(microadenoma)として発見されることが多く, 巨大腺腫(macroadenoma)は少ないとされる. ACTH腺腫は, 電子顕微鏡所見に基づき, 分泌顆粒を多く含むdensely granulated adenoma(DG), 分泌顆粒の少ないsparsely granulated adenoma(SG), 特殊型のCrooke cell adenoma等に分類される. ACTH腺腫はDGが主体とされるが, その頻度や, 腫瘍の大きさを含めた進展様式との関係については充分に検討されていない. 今回は, 世界的にも有数の症例数を持つ一病院施設での連続160症例について, 電顕所見を含めた病理学的な分類を行い, 腫瘍の進展様式との関係について検討した. 「対象と方法」: 虎の門病院にて摘出術の行われた, Cushing徴候を示した連続160症例(女性136例, 平均年齢43歳, 男性24例, 平均年齢35歳)の下垂体腺腫について臨床病理学的に検討した. 「結果」: 組織所見の内訳はDG 131(男女比F/M=109/22), SG 9(9/0), DG-SG intermediate type 5(5/0), Crooke cell adenoma 10(9/1), ACTH adenoma with oncocytic change 5(4/1)であった. また, このうち, microadenoma, macroadenomaの比率は, DG 131(micro/macro=94/37), Crooke cell adenoma 10(2/8), SG 9(0/9), DG-SG intermediate type 5(2/3), ACTH adenoma with oncocytic change 5(1/4)であった. また, honeycomb Golgi(HG)と呼ばれる, 女性のゴナドトロピン(FSH, LH)産生腫瘍の一型に特異的と考えられているGolgi体の蜂の巣状の空胞化を9例のSGのうち7例に認めた. いずれも女性(平均47才)で, 浸潤傾向を持つmacroadenomaであった. 「考察」: DGがACTH腺腫の約8割を占め, DGの約7割がmicroadenomaであった. DG以外の組織型ではmacroadenomaが多く, 細胞あたりのACTH分泌量が少ない為に臨床症状を呈するまでに腫瘍が増大していたと推測される. HGは女性型のゴナドトロピン産生腺腫のみならず, SG型のACTH腺腫にも観察されることが解った. このタイプのゴナドトロピン産生腺腫は一般的に, 非機能性腫瘍であることが多い. HGは, 分泌ホルモンの種類によらず, 機能性ホルモンの産生性が低い腺腫に認められる構造である可能性が考えられた.
ISSN:0375-9172