19. 特異的な経過により発見が遅れた, 腹腔鏡下胆嚢摘出術後の胆道損傷による遅発性胆汁漏の1例

はじめに:腹腔鏡下胆嚢摘出術は, 現在では胆石症・胆嚢炎の標準術式となっている. 術中の胆道損傷はLCの合併症としては最も多く, 報告によれば0.67%(2008年日本内視鏡外科学会アンケート報告)とされる. 今回, 我々はLC後4日目に発症したと思われる胆汁漏を, 深部切開創SSIとの併存により診断遅延を招いた症例を経験したので, その要因につき考察し, 若干の文献学的検討を加えて報告する. 症例:30歳代の女性で, 胆嚢結石症の診断で11月上旬LCを施行した. 術中胆嚢壁の損傷による胆汁漏出以外に特記事項はなく, ドレーンは留置せず70分で終了した. 翌日は軽度の炎症所見(WBC12,00...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 2011, Vol.126 (1), p.39-39
Hauptverfasser: 田中知行, 共田光裕, 武田泰裕, 吉田清哉, 長谷川拓男, 松平秀樹, 中村能人, 岩崎泰三, 山下誠, 篠田知太朗, 黒田徹, 又井一雄, 吉田和彦
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:はじめに:腹腔鏡下胆嚢摘出術は, 現在では胆石症・胆嚢炎の標準術式となっている. 術中の胆道損傷はLCの合併症としては最も多く, 報告によれば0.67%(2008年日本内視鏡外科学会アンケート報告)とされる. 今回, 我々はLC後4日目に発症したと思われる胆汁漏を, 深部切開創SSIとの併存により診断遅延を招いた症例を経験したので, その要因につき考察し, 若干の文献学的検討を加えて報告する. 症例:30歳代の女性で, 胆嚢結石症の診断で11月上旬LCを施行した. 術中胆嚢壁の損傷による胆汁漏出以外に特記事項はなく, ドレーンは留置せず70分で終了した. 翌日は軽度の炎症所見(WBC12,000/mm3, CRP0.8mg/dl)を認めたが, 発熱, 腹部症状なく, 経口摂取を開始後第2病日に退院した. 第3病日異常なし. 第4病日も問題なく起床したが, 午前8時30分突然の腹痛出現し救急受診した. 発熱無し, 炎症所見(WBC8,200/mm3, CRP0.3mg/dl)なし. 右側腹部に圧痛を認め, 総胆管への落下結石, 胆汁漏を疑った腹部CT検査では, 胆嚢床に軽度の腹水を認めるも胆汁漏所見とは有意に取れず, 胆道系に石灰化像なかったが, 右側腹部の第4ポート挿入部付近の腹斜筋, 腹横筋が著明に腫大していたため入院保存的治療の方針とした. 翌第5病日は軽度炎症所見(WBC11,700/mm3, CRP0.4mg/dl)出現したが, 発熱なく, 右第4ポート部に限局した圧痛と硬結を認め, 深部SSIと診断し保存的治療を継続した. 第6病日は軽快傾向となったが, 第7病日に炎症所見(WBC11,400/mm3, CRP11.4mg/dl)と激しい心窩部痛, 背部痛が出現し緊急内視鏡を行ったが異常はなかった. 午後5時ころ腹膜刺激症状出現し, 腹部CT検査で腹水の急激な増加を認め, 胆汁漏または小腸液漏を疑い緊急開腹手術を行った. 開腹所見は, 胆汁漏出性腹膜炎で, 胆嚢管断端近傍頭側の総胆管前面に3mm程の亀裂があり, 胆汁が漏出していた. 手術は腹腔内洗浄とT tubeドレナージを行った. 考察:LC術後2週間以内の原因不明の腹痛発症時には常に胆汁漏を念頭に置き, 早急にERCPによる診断的治療を行うことが肝要であると考えられた.
ISSN:0375-9172