7. 重症多発褥瘡患者の回復を実現した医療チームの協働

はじめに:近年の医療制度は, 高齢化の社会情勢を受け病院機能が役割分化する一方, 入院患者医療も複雑化し, 多くの場合, 複数の医療人の「協働」なしには成立しない. 今回, 重症多発褥瘡により重度の敗血症状態で入院した事例から, 患者をチームの一員として捉え, 多職種それぞれが専門的見地からの提言をフィードバックすることにより医療を実現し, 患者の回復を実現できたのではないかと考えられたためここに報告する. 事例紹介:T氏 74歳 女性 診断名:パーキンソン病 重症多発褥瘡 転倒を契機に寝たきりになり発症. 来院時は, 臀部に巨大褥瘡を形成し深さはNPUAP分類IV度, 骨・筋層までの壊死を認...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 2011, Vol.126 (1), p.32-33
Hauptverfasser: 小林雅代, 塩澤明子, 鶴田智江, 根本昌実, 海老澤高憲, 井坂剛, 増渕佳苗, 本田まりこ, 石氏陽三
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:はじめに:近年の医療制度は, 高齢化の社会情勢を受け病院機能が役割分化する一方, 入院患者医療も複雑化し, 多くの場合, 複数の医療人の「協働」なしには成立しない. 今回, 重症多発褥瘡により重度の敗血症状態で入院した事例から, 患者をチームの一員として捉え, 多職種それぞれが専門的見地からの提言をフィードバックすることにより医療を実現し, 患者の回復を実現できたのではないかと考えられたためここに報告する. 事例紹介:T氏 74歳 女性 診断名:パーキンソン病 重症多発褥瘡 転倒を契機に寝たきりになり発症. 来院時は, 臀部に巨大褥瘡を形成し深さはNPUAP分類IV度, 骨・筋層までの壊死を認め画像上もガス壊疽を示すfreeairが確認できた. 急性期, 整形外科医師により直ちに可及的に外科的デブリードマンを施行, 同時に総合内科による全身管理が行われた. 患部は巨大で支持組織までの欠損を認めた為, 排泄経路の器質的評価のため外科にコンサルト. 同時に皮膚科を中心とした褥瘡チームが介入, 連日, 洗浄・デブリードマンを施行し褥瘡局所管理を徹底した. さらに生活の整えとして, ポジショニングの徹底・栄養管理・排泄コントロールに関した看護実践を展開した. 壊死組織が除去され肉芽形成を促す慢性期には, 皮弁や植皮の適応について東京慈恵会医科大学病院の形成外科にコンサルト, 原疾患のパーキンソン病のコントロールにおいては一貫して神経内科による内服管理が行われた. その後局所・全身状態の改善に伴い, 治療開始後1ヵ月足らずで患者は回復に意欲をみせ主体的に治療へ参画するようになっていた. 考察:保存的治療の成功は, 患者の参画と複数の医療人の「協働」なしには成立しなかったと推測する. このケースは, チームパフォーマンスにより専門職種が状況をモニターし, コミュニケーションを通じて相互支援が成立したからこそ患者のアウトカムを最適化できたと考える. また, 今後の課題としては, 急性期医療と地域中核病院という役割機能を担う病院として, 医療の質・安全・効率を担保するためにチームコンピテンシーを高め, 院内外に留まらないチーム医療での「協働」が求められるのだと考える.
ISSN:0375-9172