34. 臨床分離ブドウ球菌のバイオフィルム形成能と構成成分の解析

背景と目的:血管内留置カテーテル等の医療材料表面に形成されるブドウ球菌のバイオフィルムは慢性難治性感染症の原因となる. 今回我々はバイオフィルム感染症の予防と治療法の開発のため, 臨床分離ブドウ球菌を用いてバイオフィルム形成能, 構成成分を明らかにすることを目的とした. 方法:当大学病院の患者から分離された黄色ブドウ球菌のMSSA 24株, MRSA 24株, 表皮ブドウ球菌 28株を対象とした. 形成試験では, 菌液をBrain Heart Infusion(以下BHI), 1%グルコース加BHI, および4%NaCl加BHIに接種し, ポリスチレン性プレートに37℃, 24時間静置しバイオ...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 2009, Vol.124 (6), p.269-269
Hauptverfasser: 佐藤文哉, 岩瀬忠行, 田嶌亜紀子, 進士ひとみ, 山田聡美, 水之江義充
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:背景と目的:血管内留置カテーテル等の医療材料表面に形成されるブドウ球菌のバイオフィルムは慢性難治性感染症の原因となる. 今回我々はバイオフィルム感染症の予防と治療法の開発のため, 臨床分離ブドウ球菌を用いてバイオフィルム形成能, 構成成分を明らかにすることを目的とした. 方法:当大学病院の患者から分離された黄色ブドウ球菌のMSSA 24株, MRSA 24株, 表皮ブドウ球菌 28株を対象とした. 形成試験では, 菌液をBrain Heart Infusion(以下BHI), 1%グルコース加BHI, および4%NaCl加BHIに接種し, ポリスチレン性プレートに37℃, 24時間静置しバイオフィルムを形成させた. 洗浄, 乾燥, 染色後, 吸光度(波長492nm)を測定し, 0.1以上をバイオフィルム形成と判定した. 破壊試験では形成させたバイオフィルムに, 多糖体分解酵素(Dispersin B), タンパク質分解酵素(Proteinase K), DNA分解酵素(DNase I)を37℃で2時間反応させた後, 同様に測定した. 結果:バイオフィルム形成はMSSAの7株(29%), MRSAの7株(29%), 表皮ブドウ球菌の7株(25%)で認められ, 菌種・由来間で明らかな傾向は見出されなかった. 各酵素によるバイオフィルムの破壊は, MSSAではDispersin B 0株, Proteinase K 4株, DNase I 5株に認めた. MRSAではそれぞれ1株, 4株, 4株, 表皮ブドウ球菌では4株, 2株, 3株に認めた. すべての酵素に感受性のないバイオフィルムを3株(各1)で認めた. 考察:in vitroではブドウ球菌のバイオフィルムの誘導因子としてNaCl(多糖体性)や, グルコース(タンパク質性)が知られている. 今回, 誘導因子との相関は見出されず, 構成成分の解析には破壊試験は有用と考えられた. いずれの酵素でも破壊されないバイオフィルムを形成する菌株を認め, 新たな構成成分の可能性が示唆された.
ISSN:0375-9172