B2. 向精神薬の断薬により離脱症状をおこしたクローン病の1例

要旨:向精神薬は精神科のみならず多くの診療科で使われ, その恩恵を得ている. とくに慢性疾患ではそれに伴う社会的不利益から精神的変調をきたすことも多く, その処方率は高い. しかし, 向精神薬の特徴を十分熟知していないと予想外の副作用により本来の治療に支障をきたすこともある. 今回我々は, クローン病治療中に抑うつ状態が出現したため向精神薬を処方していたが, 身体的症状に伴い自己中断したために, 離脱症状を起こした1例を報告する. 症状:36歳の男性. 18歳時に小腸型クローン病と診断され, 以後Mesalazineで加療されていた. 27歳時イレウスのために右半結腸切除術が施行され, 30歳...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 2009, Vol.124 (5), p.239-240
Hauptverfasser: 増山貴子, 落合結介, 三井こず恵, 原田大輔, 青木公義, 頴原禎人, 加田博秀, 津村麻紀, 古川はるこ, 忽滑谷和孝
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:要旨:向精神薬は精神科のみならず多くの診療科で使われ, その恩恵を得ている. とくに慢性疾患ではそれに伴う社会的不利益から精神的変調をきたすことも多く, その処方率は高い. しかし, 向精神薬の特徴を十分熟知していないと予想外の副作用により本来の治療に支障をきたすこともある. 今回我々は, クローン病治療中に抑うつ状態が出現したため向精神薬を処方していたが, 身体的症状に伴い自己中断したために, 離脱症状を起こした1例を報告する. 症状:36歳の男性. 18歳時に小腸型クローン病と診断され, 以後Mesalazineで加療されていた. 27歳時イレウスのために右半結腸切除術が施行され, 30歳からInfliximabが導入されていたが病状は安定せず入退院を繰り返していた. 徐々に抑うつ症状が強まり, 32歳時うつ病の診断で薬物療法が開始されるも, 抑うつ症状は一進一退であった. 身体症状の悪化に伴い, 向精神薬の中断後に2度の不穏症状を呈した. 一見するとせん妄と判断され抗精神病薬の投与が考えたが, 1度目はBenzodiazepine系薬剤の投与, 2度目は悪性症候群のためDantrolene Sodiumの投与によって改善した. 考察:コンサルテーションリエゾンの活動の中で, 依頼時の不穏状態で多いのはせん妄の病態である. 最近ではせん妄に対する理解が深まり, 抗精神病薬による治療は依頼前から行われることも多い. しかし, 今回のような抗精神病薬では症状の改善が図れない病態もあり, 慎重に評価・対応することが必要である.
ISSN:0375-9172