21. 当院における抗酸菌検査状況について

はじめに:当院の微生物検査室は抗酸菌検査の依頼が多く, 的確かつ迅速な対応が求められている. また従来, 抗酸菌検査は塗抹染色と固形培養が用いられていたが, 近年, 液体培養, PCR法やQFT検査が使われるようになった. それぞれの方法には, いくつかの長所, 短所があるが, それを踏まえ, 2005年から2007年の3年間のデータを集計し, 現状の把握と今後の改善点に役立てたいと考えた. 対象;2005年から2007年に当検査室に依頼のあった抗酸菌検査で塗抹検査, 培養検査(固形法, 液体法), PCR法, 薬剤感受性検査のデータを集計した. またQFT検査は, 2006年7月の開始時から...

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Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 2008, Vol.123 (6), p.381-381
Hauptverfasser: 石井裕子, 渡邊優子, 松永貴子, 石井健二, 神谷昌弓, 平井徳幸, 大西明弘
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:はじめに:当院の微生物検査室は抗酸菌検査の依頼が多く, 的確かつ迅速な対応が求められている. また従来, 抗酸菌検査は塗抹染色と固形培養が用いられていたが, 近年, 液体培養, PCR法やQFT検査が使われるようになった. それぞれの方法には, いくつかの長所, 短所があるが, それを踏まえ, 2005年から2007年の3年間のデータを集計し, 現状の把握と今後の改善点に役立てたいと考えた. 対象;2005年から2007年に当検査室に依頼のあった抗酸菌検査で塗抹検査, 培養検査(固形法, 液体法), PCR法, 薬剤感受性検査のデータを集計した. またQFT検査は, 2006年7月の開始時から2008年3月までを集計した. 結果:固形法・液体法の菌の検出までに要した日数を比較すると, 2週間での検出率は液体法58%, 固形法16%で, 液体法は固形法に比べ迅速性に優れていた. 検査法別の検査依頼数とその陽性数を集計したところ, 塗抹検査の陽性率は19%, 培養検査の陽性率は固形法が11%, 液体法は30%で, 明らかに液体法は検出率が高かった. QFTは16%陽性, 判定保留10%, 判定不可能9%でこれら合計の35%は次の診断ステップが必要であると考えられた. 痰の品質管理は精度を上げるために重要である. 唾液や粘液状の痰をM痰, 膿性部分が含まれている痰をP痰として染色陽性率を比較した. M痰8.9%, P痰26.2%とP疾が明らかに高値を示した. 2007年の1年間の薬剤感受性試験を集計したところ, TB complexにいくつかの薬剤で耐性を示す株が見られた. その患者15名を6つのタイプにわけてみた. タイプIVはRFPとINH低濃度に耐性で, 多剤耐性株に移行しつつあると考えられた. 考察:(1)抗酸菌検査は喀痰材料が主であり, 喀痰の採取法は検出率に影響する. 適切な検査依頼や喀痰採取の指導が必要となる. (2)染色は最も迅速対応ができる検査法である. 現行の直接塗抹法から精度の高い集菌法に変更予定である. (3)培養法は迅速性, 感度ともに優れている液体法と, 液体法の欠点を補う固形法の併用が望ましい. (4)QFT検査で陰性以外のものは35%あり, 次の診断ステップを必要とする. また, QFT検査陽性=活動性の感染者とは言えない. (5)2007年の1年間の集計で, 既に多剤耐性結核菌に移行する可能性を持つ菌を分離している. (6)現況, 約3割の喀痰材料に抗酸菌の存在が確認されており, 取り扱いに最新の注意をして感染防止に努めることが重要である.
ISSN:0375-9172