18. 増殖期の異なる黄色ブドウ球菌によるマウス腎に対する病原性の差異

線維芽細胞は創傷治癒の過程で出現することから, 我々は黄色ブドウ球菌と線維芽細胞との相互作用について検討を行い, 線維芽細胞が非貪食細胞であるにも拘らず黄色ブドウ球菌を多く取り込むこと, そのような細胞にネクローシスやアポトーシスが誘導されることを既に報告した. また, 増殖時期の異なる菌を比較すると, 静止期に比べて初期対数増殖期の菌は線維芽細胞に対してより強い病原性を示した. 本研究では, 両増殖期にある黄色ブドウ球菌のマウス腎における増殖と膿瘍形成を比較し, 線維芽細胞での結果も併せ, 黄色ブドウ球菌による感染巣形成過程について考察する. 黄色ブドウ球菌OK11株をBHI brothで2...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 2008, Vol.123 (6), p.310-311
Hauptverfasser: 関啓子, 進士ひとみ, 田嶌亜紀子, 岩瀬忠行, 水之江義充
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:線維芽細胞は創傷治癒の過程で出現することから, 我々は黄色ブドウ球菌と線維芽細胞との相互作用について検討を行い, 線維芽細胞が非貪食細胞であるにも拘らず黄色ブドウ球菌を多く取り込むこと, そのような細胞にネクローシスやアポトーシスが誘導されることを既に報告した. また, 増殖時期の異なる菌を比較すると, 静止期に比べて初期対数増殖期の菌は線維芽細胞に対してより強い病原性を示した. 本研究では, 両増殖期にある黄色ブドウ球菌のマウス腎における増殖と膿瘍形成を比較し, 線維芽細胞での結果も併せ, 黄色ブドウ球菌による感染巣形成過程について考察する. 黄色ブドウ球菌OK11株をBHI brothで2時間および20時間培養して洗浄し, それぞれを初期対数増殖期および静止期の菌とした. 尾静脈からマウスに菌を接種後, 30分, 1日, および2日目に腎を摘出し, そのホモジェネートから腎内菌数を算出した. また, 腎組織のパラフィン切片を作成し, 形態観察を行った. 静止期の菌に比べ, 対数増殖期の菌は約10倍多く腎に定着し, 増殖した. グラム染色像から, これらの菌は腎小体を初期感染巣とし, 皮質部における膿瘍形成, さらには遠位尿細管へと感染を広げたと推測された. また, TUNEL染色により, 対数増殖期の菌は菌塊周囲の細胞や明確な膿瘍の周囲の細胞群にアポトーシスを誘導することが示された. 静止期の菌接種では, 腎小体と近位尿細管を中心とした皮質部での感染巣形成に留まり, その周囲にアポトーシス細胞は認められなかった. これらから, 静止期に比べ, 対数増殖期の菌はマウス腎細胞に対して強い病原性を示すことが明白である. 一方, L細胞が対数増殖期の菌をより多く取込むことがすでにわかっている. 以上から, 病原性の強い菌は何らかのきっかけで生じた線維芽細胞などの細胞に取込まれると内部で活発に増殖し, それが感染巣の核に成り得ると推測した.
ISSN:0375-9172