6. 生まれてくる子供のために, 葉酸を―神経管閉鎖不全の予防について
「はじめに」二分脊椎の最重症型である神経管閉鎖不全は, 頭側に起きると無脳症, 尾側に起きると脊髄披裂となる. 無脳症は全例生下時死亡, 脊髄披裂は生後体外に露出した脊髄を処置すれば致死的ではないが, 下肢の運動感覚障害および排泄障害, 脳の形態および機能異常は生涯伴う. 本疾患は, 先天的中枢神経系異常であり, 現段階ではこれら異常を生後に改善する手段はなく, 予防が最良の治療法と考えられる. 葉酸:葉酸はアミノ酸や核酸の合成に必要となる補酵素であるため, 細胞分裂の盛んな箇所において欠乏症が現れやすく, 代表的疾患としては巨赤芽球貧血がある. 近年では, 妊娠初期の葉酸摂取が, 神経管閉鎖...
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Veröffentlicht in: | 東京慈恵会医科大学雑誌 2008, Vol.123 (3), p.182-182 |
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Hauptverfasser: | , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 「はじめに」二分脊椎の最重症型である神経管閉鎖不全は, 頭側に起きると無脳症, 尾側に起きると脊髄披裂となる. 無脳症は全例生下時死亡, 脊髄披裂は生後体外に露出した脊髄を処置すれば致死的ではないが, 下肢の運動感覚障害および排泄障害, 脳の形態および機能異常は生涯伴う. 本疾患は, 先天的中枢神経系異常であり, 現段階ではこれら異常を生後に改善する手段はなく, 予防が最良の治療法と考えられる. 葉酸:葉酸はアミノ酸や核酸の合成に必要となる補酵素であるため, 細胞分裂の盛んな箇所において欠乏症が現れやすく, 代表的疾患としては巨赤芽球貧血がある. 近年では, 妊娠初期の葉酸摂取が, 神経管閉鎖不全に対して効果的であるとの報告がされ, 注目されるようになってきている. 葉酸の予防効果:葉酸の神経管閉鎖不全への予防効果に関しては, 1991年の米国CDCの葉酸摂取の勧告以来, 疫学的調査により確認されている. 一方その予防メカニズムに関しては, まだ不明な点が多いが, 動物実験より次第に明らかになりつつある. その中の1つ, Splotchは, 神経管閉鎖不全モデルマウスであるが, 遺伝子Pax3に点変異があることが分かっている. 神経管閉鎖不全を伴う胎仔では, このPax3変異遺伝子発現が, コントロール群Pax3遺伝子発現よりも多いことが, DNA microarrayおよびReal-time PCRの実験により明らかになっている. しかしこのPax3変異遺伝子発現は, 葉酸投与群において神経管閉鎖不全群よりも少なく, 葉酸が正常Pax3の何らかの役割をしているのではと考えられた(2007年Nakazaki H, Mayanil CSK et al.). 摂取方法:葉酸はほうれん草などの野菜に含まれているが, 料理法によって大量に失われたりするため, 米国CDCの勧告通りに1日0.4mg摂取できているかどうかわかりづらい. また, 多量に取りすぎても, 今度は流産の原因となることもあり(Nakazaki H, Mayanil CSK et al.), その摂取量に関しては, 慎重を要する. 最近では, 市販の1錠0.4mgの葉酸サプリメントが入手可能であるので, 妊娠を希望されている方は, これらを1日1錠服用すると良い. 結語:挙児希望の女性は, 1日1錠, 葉酸サプリメントを服用することが望ましい. |
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ISSN: | 0375-9172 |