46. 黄色ブドウ球菌の定着を阻害する常在性表皮ブドウ球菌の解析

黄色ブドウ球菌(S.aureus)は, 皮膚膿瘍や重篤な感染症である肺炎や敗血症を起こす医学的に重要な細菌である. S.aureusは健常人の鼻腔から約30%の割合で検出される. 検出されない残りの約70%はその定着を免れていると考えられるが, そのメカニズムは明らかではない. 我々はこれまでに, 鼻腔由来の常在性ブドウ球菌S.epidermidisが, S.aureusの定着をin vitroにおいて有意に阻害することを見出している. 今回, S.epidermidisからS.aureusの定着阻害因子を単離し, さらにその定着阻害因子を分泌する阻害性のS.epidermidisのS.aur...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 2007, Vol.122 (6), p.262-262
Hauptverfasser: 岩瀬忠行, 関啓子, 進士ひとみ, 田嶌亜紀子, 水之江義充
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:黄色ブドウ球菌(S.aureus)は, 皮膚膿瘍や重篤な感染症である肺炎や敗血症を起こす医学的に重要な細菌である. S.aureusは健常人の鼻腔から約30%の割合で検出される. 検出されない残りの約70%はその定着を免れていると考えられるが, そのメカニズムは明らかではない. 我々はこれまでに, 鼻腔由来の常在性ブドウ球菌S.epidermidisが, S.aureusの定着をin vitroにおいて有意に阻害することを見出している. 今回, S.epidermidisからS.aureusの定着阻害因子を単離し, さらにその定着阻害因子を分泌する阻害性のS.epidermidisのS.aureusの定着に対する作用をヒト鼻腔において検討したので報告する. 88名の健康成人男女から収集したブドウ球菌がS.aureusの定着を阻害するかどうかを調べるために, ろ過滅菌したそれぞれの菌の培養上清を, S.aureusを含む試験培地に添加した. 培養後, 定法にて付着細菌を定量した. S.aureusとその定着を阻害する細菌とのヒトにおける関係を調べるため, logistic regression解析を行った. 定着阻害作用を示す菌は約50%のヒトに存在することが確認され, それらの菌はS.epidermidisであった. さらに, 得られた全ての株を同定したところ, S.epidermidisは被験者の98%に存在することが判明し, S.epidermidisにはS.aureusの定着を阻害する株と阻害しない株があることが明らかになった. S.aureusの検出率は32%であったが, S.aureusの定着を阻害するS.epidermidisが鼻腔に存在する時, S.aureusの検出率は有意に低いことが確認された. さらに, そのS.epidermidisからS.aureusの定着阻害を引き起こす因子を単離したところ, その因子はS.aureusのkeratin-coated dishへの定着を阻害するだけでなく, ディッシュに既に定着しているS.aureusを遊離させる作用も有していた. また, 阻害因子を分泌する阻害性S.epidermidisをS.aureusの定着している鼻腔内に投与したところ, S.aureusを大きく減少させることが確認された. これらの結果は, ヒトにおいてS.aureusの検出率が低いという現象に, S.epidermidisの有する定着阻害作用が大きく関与していることを示唆する. この詳細を明らかにすることにより, in vivoにおけるS.aureusを制御する新たな方法が見出されるかもしれない. 会員外協力:上原良雄(高知大学医学部附属病院総合診療部)
ISSN:0375-9172