B1. 子宮温存が可能であった癒着胎盤の1例
癒着胎盤とは胎盤の一部または全部が子宮筋層内に侵入し, 子宮と胎盤が強固に癒着するため剥離が困難となる病態である. 今回我々はmethotrexate(以下MTX)を投与することで保存的に治療しえた癒着胎盤の1例を経験したため報告する. 症例:27歳0経妊0経産, 妊娠経過中に特記すべき異常を認めず. 妊娠38週自然陣痛発来のため当院入院, 順調に経過して3,630gの男児経膣分娩となった. しかし, その後, 胎盤が剥離せず, 癒着胎盤と診断した. 胎盤遺残による産褥期出血・産褥熱・敗血症などのリスクを説明し, 一般的な取り扱いである子宮全摘について説明したが, 本人および家族より強い妊孕性...
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Veröffentlicht in: | 東京慈恵会医科大学雑誌 2007, Vol.122 (4), p.171-171 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 癒着胎盤とは胎盤の一部または全部が子宮筋層内に侵入し, 子宮と胎盤が強固に癒着するため剥離が困難となる病態である. 今回我々はmethotrexate(以下MTX)を投与することで保存的に治療しえた癒着胎盤の1例を経験したため報告する. 症例:27歳0経妊0経産, 妊娠経過中に特記すべき異常を認めず. 妊娠38週自然陣痛発来のため当院入院, 順調に経過して3,630gの男児経膣分娩となった. しかし, その後, 胎盤が剥離せず, 癒着胎盤と診断した. 胎盤遺残による産褥期出血・産褥熱・敗血症などのリスクを説明し, 一般的な取り扱いである子宮全摘について説明したが, 本人および家族より強い妊孕性の温存の希望があった. 胎盤の剥離はないものの止血しており全身状態が良好であること, 超音波およびMRI等の画像診断で深部筋層までの絨毛の侵入所見が無いことを確認した上で, MTX 20mg/日の経静脈投与による胎盤の壊死→自然排出を期待する方針とした. 経過:MTX投与開始7日日より副作用と考えられる発熱・感染徴侯を認めたため, 同日(産褥16日)全身麻酔下に経膣的子宮内容除去術を施行したところ, 胎盤を排出させることができた. 現在分娩後4カ月であるが, 経過は良好である. 癒着胎盤は(その程度によるが)剥離処置によって大量出血・止血不能となったり, 産褥期の感染やDICを生じたりした結果, 母体に対する集中治療や多量輸血・子宮摘出, 最悪の場合, 母体死亡にもつながる重篤な疾患であるにもかかわらず, 妊娠中からの診断は困難である. 癒着胎盤と診断した場合その取り扱いには非常に難渋することも多いが, 本症例のように出血が多くなく, 全身状態が良好である場合には保存的な取り扱いも選択しうると考えられた. |
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ISSN: | 0375-9172 |