5.フィブロネクチン結合因子FnBPA欠損株を用いた黄色ブドウ球菌に対する宿主細胞応答の解析
細菌は種々の生体成分に対する接着因子を保有しており, これらの因子を介して宿主組織に結合し感染する. 黄色ブドウ球菌にもこのような因子は複数存在し, 菌はこれらの因子を介して組織に定着する他, 上皮細胞・血管内皮細胞・繊維芽細胞に取り込まれ, 細胞内での増殖あるいは細胞死を誘導することが報告されている. フィブロネクチン結合因子FnBPは, 早期対数増殖期に発現しA・B2つのホモログをもつ接着因子であり, ほとんどの黄色ブドウ球菌はその両方を保有している. 今回, FnBPA遺伝子fnbAを相同組換えにより変異させた株を作成し, この変異株に対する宿主細胞の応答性の変化について以下の検討を行っ...
Gespeichert in:
Veröffentlicht in: | 東京慈恵会医科大学雑誌 2006, Vol.121 (6), p.261-262 |
---|---|
Hauptverfasser: | , , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
Tags: |
Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
|
Zusammenfassung: | 細菌は種々の生体成分に対する接着因子を保有しており, これらの因子を介して宿主組織に結合し感染する. 黄色ブドウ球菌にもこのような因子は複数存在し, 菌はこれらの因子を介して組織に定着する他, 上皮細胞・血管内皮細胞・繊維芽細胞に取り込まれ, 細胞内での増殖あるいは細胞死を誘導することが報告されている. フィブロネクチン結合因子FnBPは, 早期対数増殖期に発現しA・B2つのホモログをもつ接着因子であり, ほとんどの黄色ブドウ球菌はその両方を保有している. 今回, FnBPA遺伝子fnbAを相同組換えにより変異させた株を作成し, この変異株に対する宿主細胞の応答性の変化について以下の検討を行ったので報告する. 1. 非貪食細胞による取込み ヒト血管内皮細胞およびマウス繊維芽細と菌を共培養し, 細胞内への菌の感染について観察した. その結果, いずれの細胞においても変異株の感染数は親株に比べて顕著に減少した. 2. 食細胞による貪食 炎症性MΦは感染巣における菌の排除に, 好中球とともに重要な役割を果たしている. MΦには異物を認識するための受容体が多数発現し, 菌表面物質を直接認識するほか, 補体・抗体等のオプソニンによる菌の認識機構も備わっている. 我々は以前, フィプロネクチン(FN)を結合した菌がα5β1-integrinに認識・貪食されることを報告した. 今回この作用について検討したところ, 変異株では全く認められなかった. 3. 食細胞のサイトカイン産生菌と共培養したMΦによる炎症性サイトカイン産生について検討したところ, 親株ではFN共存下での産生量が非共存下での産生量より低下したのに対し, 変異株ではFNの有無に関わらず高産生を示した. 以上の結果より黄色ブドウ球菌FnBPAは非貪食細胞への感染に関与すること, FN/integrinを介したMΦによる貪食機構においても重要な役割を果たすことが明らかになった. 更に, FN/integrinにより食作用は活性化される反面, 炎症惹起反応は減弱する可能性が示唆された. (会員外協力者:内田敦子) |
---|---|
ISSN: | 0375-9172 |