A4. 入所中鏡現象の観察された症例について

鏡現象とは, 自己鏡像と話をしたり, 物を手渡そうとするなどの交流をもつ現象で, アルツハイマー型痴呆(以下AD)に特有な症状といわれるが, その報告は必ずしも多くない. Forstlらによると, 本症の128例中7例(5.46%)に鏡現象を認めている. 今回, 施設入所中のAD8例に本現象を経験したので, 若干の考察を加え報告し, 詳細に観察しえた2例を呈示する. 研究方法:平成10年7月1日から同16年9月30日までの6年2ヵ月間, 当施設に入所したADの286例中鏡現象の観察された8例につき, 性別年齢発現時期痴呆の程度鏡現象の内容徘徊など関連があると思われる症状を検討した. 結果および...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 2005, Vol.120 (3), p.133-133
Hauptverfasser: 金田将司, 猿橋由起, 早瀬川繭美, 宮本健太, 西澤康代, 三浦友子, 石井恭子, 渡邊禮次郎
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:鏡現象とは, 自己鏡像と話をしたり, 物を手渡そうとするなどの交流をもつ現象で, アルツハイマー型痴呆(以下AD)に特有な症状といわれるが, その報告は必ずしも多くない. Forstlらによると, 本症の128例中7例(5.46%)に鏡現象を認めている. 今回, 施設入所中のAD8例に本現象を経験したので, 若干の考察を加え報告し, 詳細に観察しえた2例を呈示する. 研究方法:平成10年7月1日から同16年9月30日までの6年2ヵ月間, 当施設に入所したADの286例中鏡現象の観察された8例につき, 性別年齢発現時期痴呆の程度鏡現象の内容徘徊など関連があると思われる症状を検討した. 結果および考察:鏡現象の発現頻度はAD286例中8例(2.8%). アルツハイマー病では7例中3例と頻度が高い. 男性3例, 女性5例. 入所前に日中独居か, 家族との接触が密接でない症例に多く, 徘徊人物誤認は全例に, 妄想独語も高頻度に合併をみた. 発現時期はADとして中期で発症後3-5年, 痴呆の程度は高度で, 長谷川式痴呆スケールは5点以下. 障害老人生活自立度はA(軽度)である. 他者鏡像の認知は可能であるが, 自己鏡像は認知できず, 男性では攻撃的な言葉, 行動が目立ち, 女性では友好的な言動, 態度がみられた. 手鏡では見られず, 大きな鏡の前で発現しやすい. 鏡現象は痴呆がさらに進行し鏡に関心を示さなくなると消失する. 諸家の指摘するように鏡との対人交流を通じて, 人格破壊の過程で何とか自らの社会的存在を保とうとする最終段階と解釈できよう. 鏡現象が頻繁に観察されるアルツハイマー病の53歳男性例, 57歳女性例を呈示した. 結論:1. 鏡現象はAD286例中8例(2.8%)に認められた. 2. 発症後3-5年, 中期に発現している. 3. 鏡現象に先行して全例, 顕著な徘徊がみられた. 4. 手鏡では見られず, 大きい鏡の前で観察された. 5. 鏡の前では男性は攻撃的な, 女性は友好的な言動が目立った.
ISSN:0375-9172