B3. 直腸癌術後Serratia感染による敗血症を認めた1症例-Serratia菌による院内感染を中心に

Serratiaは腸内細菌科に属する好気性グラム陰性桿菌で, 腸管や土壌中などに広く分布する弱毒菌である. 栄養状態の悪い環境でも湿潤していれば生存可能であり, 低温でも増殖可能である. そのため, 院内で水周り等の湿潤した場所に生息し, 日和見感染を起こすため, 近年, Serratiaの院内感染が問題となっている. われわれは, 直腸癌術後, Serratia感染により敗血症に至った1症例を経験したので報告する. 症例は84歳, 男性. 直腸癌に対し, 2004年1月5日に高位前方切除術が施行された. 術後2日に, 40.1℃の発熱を認め, 血液培養からSerratia marcescen...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 2004, Vol.119 (5), p.368-368
Hauptverfasser: 北川和男, 二村浩史, 河原秀次郎, 遠山洋一, 梁井真一郎, 篠原寿彦, 鳥海久乃, 柳澤暁, 柏木秀幸
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:Serratiaは腸内細菌科に属する好気性グラム陰性桿菌で, 腸管や土壌中などに広く分布する弱毒菌である. 栄養状態の悪い環境でも湿潤していれば生存可能であり, 低温でも増殖可能である. そのため, 院内で水周り等の湿潤した場所に生息し, 日和見感染を起こすため, 近年, Serratiaの院内感染が問題となっている. われわれは, 直腸癌術後, Serratia感染により敗血症に至った1症例を経験したので報告する. 症例は84歳, 男性. 直腸癌に対し, 2004年1月5日に高位前方切除術が施行された. 術後2日に, 40.1℃の発熱を認め, 血液培養からSerratia marcescensが検出された. 同菌による敗血症と診断し, CAZ, IPM/CS, CPFX, γ-globulinを使用し, その後の経過は良好で術後第20病日後に退院となった. 感染経路は明らかではないが, 患者から検出された菌と, 準備室水道脇の水切り籠から検出された菌のDNAが一致するSerratiaが認められ, 感染源の可能性として否定はできないと考えられた. Serratia菌感染症のおもな感染経路は, 患者体内に生息していた菌が, 生体の感染防御機能の低下を契機に増殖して感染症を発症する内的感染と, 接触感染による外的感染がある. 感染能力, 伝播性は緑膿菌に比べ数段弱いものの, 発症すると敗血症性ショックによる重篤な病態に陥り, 致死率は54%と非常に高率である. 以前は第三セフェム薬やカルバペネム薬が有効であったが, 近年は多剤耐性化傾向となってきた. その多剤耐性菌による院内感染が近年問題となってきており, 今回, 感染経路の検索, 治療法, 発症予防法において若干の文献的考察を加え報告する.
ISSN:0375-9172