A3. 虚血-再灌流障害が卵巣機能に及ぼす影響

目的：スーパーオキサイド(O2-)をはじめとする活性酸素種(ROS)は, 外来異物の排除や血管収縮などの恒常性維持に働く分子として重要であるが, 過剰なROSが生体内で発生した場合, 強い酸化作用によって器官組織を構成する細胞が破壊, あるいは遺伝子変異が起こり様々な疾病を引き起こす. O2-は加齢, 喫煙, 大気汚染, 組織の虚血再灌流などによって過剰に産生される. 現在, 脳梗塞や心筋梗塞に代表される脳血管障害あるいは心疾患が増加傾向にあるが, O2-はこれらの疾患の発生要因となることはすでに知られている. しかしながら, 女性不妊とROSとの関連について検討した報告はいまだに少なく, 卵巣機能に至っては国内外の文献をあたってもきわめて少ない. そこで我々は, ラットを用いて活性酸素, とりわけO2-を局所で過剰に発生させることのできる虚血-再灌流(I/R)障害を卵巣に与えた場合, 卵巣および排卵卵子の性状にどのような影響を及ぼすかについて検討した. 方法：ラット(Wistar系12-15週齢)に全身麻酔を施し, 臍部から正中後方に3cm程度開腹した. 左右子宮角および卵巣を露出し, 左卵巣門において卵巣動静脈の血流を遮断(虚血)し, 4時間後に遮断を解除(再灌流)し, 閉腹した. なお右卵巣はI/R処置は行わず対照とした. この24時間後にPMSG50iuを皮下投与し, さらに48時間後にhCG50iuを皮下投与することで過排卵を誘起した. hCG投与後24時間で左右卵巣および卵管を摘出した. 摘出した卵巣は重量および排卵数を計測後, ただちに固定し, H-E染色を施して組織学的検索を行った. 卵管はスライドグラスによるサンドウィッチ法により圧扁標本を作成し, 卵管膨大部内の排卵卵子の個数, および形態を実体顕微鏡下で観察した. 成績と考察：I/R処置ラットの過排卵時における卵巣重量はI/Rを行った左卵巣で38.1±9.4g, 対照の右卵巣では63.1±12.2gであり左卵巣の有意(p