26. スタンダードプリコーションに基づいた手洗い効果の実態

感染対策プロジェクトのリンクナースの役割は, 現場の感染防止に関する疑問や問題を明確にし, 感染対策を啓蒙や指導することである. そこで, 院内感染の多くを占める接触感染はスタンダードプリコーションを基本とする手の衛生により低減できることに着目し, 平成15年7月からの2ヵ月間かけて看護師377名に対して東京都院内感染対策チェックリストを基に手洗いの実態調査を行った. 調査するにあたり, スタンダードプリコーションについてリンクナースで共通理解し, 対象者全員に手洗いについて指導を行い自己評価を行ってもらった. できていない項目は, 腕時計指輪をはずしている, 指先爪の内側を十分に洗っている,...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 2004, Vol.119 (5), p.357-358
Hauptverfasser: 清武万貴, 渡辺風美, 盛田真弓, 松澤真由子, 堰免サキ子, 佐々木洋子, 吉川望, 梶山真代, 小宮妙子, 米山忍, 柴原早苗, 山下正和, 寺澤美津子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:感染対策プロジェクトのリンクナースの役割は, 現場の感染防止に関する疑問や問題を明確にし, 感染対策を啓蒙や指導することである. そこで, 院内感染の多くを占める接触感染はスタンダードプリコーションを基本とする手の衛生により低減できることに着目し, 平成15年7月からの2ヵ月間かけて看護師377名に対して東京都院内感染対策チェックリストを基に手洗いの実態調査を行った. 調査するにあたり, スタンダードプリコーションについてリンクナースで共通理解し, 対象者全員に手洗いについて指導を行い自己評価を行ってもらった. できていない項目は, 腕時計指輪をはずしている, 指先爪の内側を十分に洗っている, 親指と手の平をねじり洗いしている, 押上げ式の蛇口は手首で閉じているまたは使用後のぺーパータオルを使用している, 他の患者の処置に移る前に必ず手を洗う, 15番の同一患者でも次の処置を行う前に手を洗っている, スタンダードプリコーションにおける手洗いの意味を知っている, と全体の70%以下の実施状況であった. このことより(1)全セクションを通し, 処置前の手洗いは不十分でスタンダードプリコーションの概念が十分浸透されてない, (2)手洗い方法についても, 細菌が残りやすい指の間や爪の先は, おろそかになりがちである, (3)手洗いは必要回数の半分しか行われておらず推奨時間より短時間である, ことが読み取れた. この実態調査後, リンクナースとして現場の状況を観察していくと, ベンクロジドアルコールは活用されているが1回量が少なかったり手洗いの時間が短かったりした. また処置前の手洗いがなく, 手袋をはずした後の手洗いがされていなかったり, ベンクロジドアルコールや手洗い液体石鹸が活用されていないという実態も目についた. これらのことから, 手指衛生に対する個人の認識を変えて行動変容をおこしていくことが現場におけるリンクナースの最重要役割だと認識した. 院内感染はメディカルエラーであるといわれており, 健康被害に加え, 医療費の増大などの社会的負担をもたらす. 科学的な根拠に基づいた感染防止策が強く求められる臨床において, 感染対策は看護師だけでなく, 医師をはじめとするすべての職員の協力がなければ院内感染は防止できない. 看護部では組織化の一つとして, 平成15年度は各セクションに感染対策担当者と各フロアーよりリンクナースを配置し, 各セクションにおける問題抽出と解決するための啓蒙活動と指導教育を行ってきた. しかし, 課題として専任の育成とともに, 病院全体の管理に取組む感染制御チームの設置が必要とされている. そして感染管理をマニュアル化しただけでは院内感染を減少させることはできないことがあげられた. そこで, 平成16年度は各看護室にリンクナースを配置し感染対策委員会との連動をし, 教育現場の問題抽出サーベランスの強化体験学習認定看護師の育成に力をいれ, 感染防止対策の院内への浸透を目指している.
ISSN:0375-9172