20. 外科的血栓摘除術により救命し得たショックを有する急性肺動脈血栓塞栓症の2症例
今回我々は, 外科的血栓摘除術により救命し得たショックを有する急性肺動脈血栓塞栓症の2症例を経験したので報告する. 症例1:38歳, 女性. 主訴:呼吸困難. 起始, 経過:2003年2月6日, 子宮筋腫合併妊娠のため当院産婦人科にて帝王切開を施行した. 翌日初回歩行時に, 突然の呼吸困難が出現しショック状態となった. 胸部造影CT, 心エコーなどにより急性肺動脈血栓塞栓症と診断し同日循環器科転科となった. 治療経過:発症直後に血圧低下, ショックとなったがカテコラミンにて速やかに改善. 手術直後であり血栓溶解療法は施行せず, 抗凝固療法のみ開始した. 血圧, 酸素飽和度は安定していたが, 肺...
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Veröffentlicht in: | 東京慈恵会医科大学雑誌 2004, Vol.119 (5), p.354-354 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 今回我々は, 外科的血栓摘除術により救命し得たショックを有する急性肺動脈血栓塞栓症の2症例を経験したので報告する. 症例1:38歳, 女性. 主訴:呼吸困難. 起始, 経過:2003年2月6日, 子宮筋腫合併妊娠のため当院産婦人科にて帝王切開を施行した. 翌日初回歩行時に, 突然の呼吸困難が出現しショック状態となった. 胸部造影CT, 心エコーなどにより急性肺動脈血栓塞栓症と診断し同日循環器科転科となった. 治療経過:発症直後に血圧低下, ショックとなったがカテコラミンにて速やかに改善. 手術直後であり血栓溶解療法は施行せず, 抗凝固療法のみ開始した. 血圧, 酸素飽和度は安定していたが, 肺動脈の血栓は残存しており血栓除去術を予定した. しかし2月11日に突然, 血圧が80台に低下, 酸素飽和度も75%と急激に低下したため気管内挿管し, 緊急手術目的にて転院となった. 術後は経過良好で独歩退院された. 症例2:23歳, 女性. 主訴:手術中の頻脈, 血圧低下. 起始, 経過:2003年12月18日, 交通事故にて骨盤骨折し当院整形外科に入院. 12月24日, 骨盤骨折手術中に頻脈, 血圧低下を来した. 心エコー, 造影CTを行った所, 両側肺動脈, 下大静脈に血栓を認め急性肺血栓塞栓症と診断した. 治療経過:抗凝固剤およびtPA40万単位を肺動脈より投与した. 発症直後の収縮期肺動脈圧(sPAP)は30-35mmHgであった. しかし翌日sPAPは38-40mmHgと上昇傾向. 血圧の低下, 酸素飽和度も92%と低下傾向であったため内科的治療の限界と考えて緊急手術目的に転院となった. 術後は経過良好で独歩退院された. 考察:肺動脈血栓除去術の適応は, 血行動態が高度に不安定で内科的治療に反応しない場合, 肺動脈の閉塞が広範囲な場合, 血栓溶解療法に反応しない場合, 血栓溶解療法が禁忌な場合とMeyerらは提唱している. 心原性ショック症例における治療成績の報告はばらつきがあるが血栓溶解薬使用例と非使用例での死亡率は20%対50%と明らかに差が出ており, 直視下血栓除去術と血栓溶解療法では23%対33%と血栓除去術のほうが死亡率が低い候向が報告されている. 急性肺血栓塞栓症の治療において, 血栓除去術と血栓溶解療法のどちらを選択すべきか統一した見解は得られていないが, 今回我々が経験したような血栓溶解療法が禁忌である場合や内科的治療で血行動態の改善が得られない場合は早期に血栓除去術を考慮する必要があると考えられた. |
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ISSN: | 0375-9172 |