9. ヒトヒフバエによる皮膚蛆症

41歳, 男. 2004年3月14-21日観光目的でガラパゴス諸島に渡航中の3月15日頃から左上背部に虫刺様の紅色丘疹が出現した. 皮疹が徐々に増大したため, 近医を受診し, 炎症性粉瘤の診断にて4月13日当科を紹介受診した. LVFX300mg/日を7日間内服したが, 皮疹の縮小はみられなかった. 中心付近は自壊し, 血性浸出液が排出されており, 局麻下にて硬結の切開処置を行ったところ, 脂肪織層より幼虫様の虫体が摘出された. 体長13mm, 幅7mmの白色米粒状で腹部に黒い点線状の縞が存在した. 虫体を本学熱帯医学講座へ提出し, ヒトヒフバエ3齢幼虫と同定した. 皮疹部はその後速やかに腫脹...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 2004, Vol.119 (5), p.349-349
Hauptverfasser: 永森克志, 片山壽子, 松本孝治, 五十嵐努, 中川秀己, 熊谷正広
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:41歳, 男. 2004年3月14-21日観光目的でガラパゴス諸島に渡航中の3月15日頃から左上背部に虫刺様の紅色丘疹が出現した. 皮疹が徐々に増大したため, 近医を受診し, 炎症性粉瘤の診断にて4月13日当科を紹介受診した. LVFX300mg/日を7日間内服したが, 皮疹の縮小はみられなかった. 中心付近は自壊し, 血性浸出液が排出されており, 局麻下にて硬結の切開処置を行ったところ, 脂肪織層より幼虫様の虫体が摘出された. 体長13mm, 幅7mmの白色米粒状で腹部に黒い点線状の縞が存在した. 虫体を本学熱帯医学講座へ提出し, ヒトヒフバエ3齢幼虫と同定した. 皮疹部はその後速やかに腫脹が軽減し, 切開から約3週後には瘢痕を残さず略治した. 皮膚蛆症は人体内にハエの幼虫が寄生して発症する疾患で, 真性と偶発性皮膚蛆症に分けられている. 真性皮膚蛆症は蚊等を媒介し, 蛆が人畜に寄生するものであるのに対し, 偶発性皮膚蛆症は皮膚の創傷部などへのハエの直接的産卵によって発症する. 自験例は外傷などの既往がなかったことなどから真性皮膚蛆症と考えられた. 中南米の真性皮膚蛆症の原因はヒトヒフバエであるが, 本症を起こすハエは日本には生息しない. 一方, 偶発性皮膚蛆症は最近では本邦でも老人病棟などでの発症例が多い. ヒトヒフバエは中南米に分布し, 体長は1.5cm程度である. (1)メスが飛行中に蚊などの腹部に産卵する. (2)蚊が人畜などを吸血中にふ化し, 1齢幼虫が人畜の皮下へ侵入する. (3)幼虫は約50日で成熟した3齢幼虫になり, その後, 自ら脱出して地中に入り, 蛹となりう化する. 成虫となり交尾後, (1)-(3)を繰り返す. ヒトヒフバエが分布する中南米などへの渡航の際には注意が必要と考えられる.
ISSN:0375-9172