1. 子宮体癌再発に対する化学療法中にWernicke脳症を発症した1例

Wernicke脳症は1881年Carl Wernickeによって報告された疾患で, ビタミンB1欠乏による脳細胞へのエネルギー供給不足や, α-ケトグルタル酸脱水素反応不全によって起こるグルタミン酸増加に伴う脳神経細胞傷害が発症の原因と考えられている. 症状は眼球運動障害, 運動失調, 意識障害を三主徴とする. 約半数の例は見当識障害健忘作話を三主徴とするKorsakoff症候群に移行するといわれる. 症例は68歳, 女性. 平成14年に子宮頚癌IIa期に対し手術と化学療法を施行した. 平成15年7月膣断端に再発し放射線療法と化学療法(CDDP3コース)を追加した. 化学療法2コース終了後,...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 2004, Vol.119 (5), p.345-346
Hauptverfasser: 青木宏明, 高橋絵理, 国東志郎, 松岡良衛, 石塚康夫, 鶴岡三知男, 礒西成治, 杉田元, 中林豊, 木村英三
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:Wernicke脳症は1881年Carl Wernickeによって報告された疾患で, ビタミンB1欠乏による脳細胞へのエネルギー供給不足や, α-ケトグルタル酸脱水素反応不全によって起こるグルタミン酸増加に伴う脳神経細胞傷害が発症の原因と考えられている. 症状は眼球運動障害, 運動失調, 意識障害を三主徴とする. 約半数の例は見当識障害健忘作話を三主徴とするKorsakoff症候群に移行するといわれる. 症例は68歳, 女性. 平成14年に子宮頚癌IIa期に対し手術と化学療法を施行した. 平成15年7月膣断端に再発し放射線療法と化学療法(CDDP3コース)を追加した. 化学療法2コース終了後, 消化器症状が増悪して栄養補給目的で入院となったが, 入院と同時に著明な骨髄抑制, 発熱, 電解質異常が出現し, これに対する治療を行ったが治療抵抗性であった. 1週間後より複視症状と意識レベル低下が進行し精査したところ, 頭部MRI所見と血中ビタミンB1値よりWernicke脳症と診断, 大量ビタミンB1投与により徐々に意識レベルの向上を認め, 退院となった. 今までWernicke脳症の原因としては慢性アルコール中毒者や妊娠悪阻に発症するもの, 高カロリー輸液中のビタミンの入れ忘れによるものなどの報告が多くなされてきた. しかし, 末梢補液中でも摂取不足ならびに消費の亢進が続けばWernicke脳症は発症する可能性がある. 一般にWernicke脳症は予後が悪い疾患とされているが, 早期診断し, 早期からビタミンB1の投与を行えば後遺症なしに回復した例も報告されている. そのため, 末梢補液中においてもビタミンB1の不足あるいは需要の亢進が疑われ, 眼症状, 意識障害, 運動失調のいずれかを呈した場合には積極的にWernicke脳症を疑い頭部MRI, 血中ビタミンB1測定を施行, 診断がつきしだい早期にビタミンB1の投与を開始することが重要である.
ISSN:0375-9172