43. 環状20番染色体異常に伴い非けいれん性発作重延状態を呈した難治てんかんの1例

環状20番染色体を背景にもち非けいれん性発作重延状態を呈する難治てんかん例を経験したのでその臨床経過について報告する. 症例:32歳女性. 正常分娩にて出生後とくに誘因なく3歳9ヵ月時に痙攣発作が出現. 脳波上広汎性高振福徐波律動, 棘徐波複合を認め, てんかんと診断され抗てんかん薬による治療を開始した. しかし発作コントロール不良のため15歳時に他院にて入院治療を行ない環状20番染色体異常を指摘された. 発作は極めて難治でありほぼ毎日約40-60分間の持続の長い意識のくもりを主徴とする非痙攣発作が反復する. 多くは頭痛, 眠気発作, 眩暈, 意識消失を伴う. また睡眠中には複雑な身振り自動症...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 2003, Vol.118 (6), p.457-457
Hauptverfasser: 高橋千佳子, 須江洋成, 中山和彦, 牛島定信
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:環状20番染色体を背景にもち非けいれん性発作重延状態を呈する難治てんかん例を経験したのでその臨床経過について報告する. 症例:32歳女性. 正常分娩にて出生後とくに誘因なく3歳9ヵ月時に痙攣発作が出現. 脳波上広汎性高振福徐波律動, 棘徐波複合を認め, てんかんと診断され抗てんかん薬による治療を開始した. しかし発作コントロール不良のため15歳時に他院にて入院治療を行ない環状20番染色体異常を指摘された. 発作は極めて難治でありほぼ毎日約40-60分間の持続の長い意識のくもりを主徴とする非痙攣発作が反復する. 多くは頭痛, 眠気発作, 眩暈, 意識消失を伴う. また睡眠中には複雑な身振り自動症が出現した. 脳波所見は間欠期にびまん性3-4Hz高振幅徐波および棘徐波複合の混入, 発作時にびまん性3-4Hz高振幅辣徐波複合による不規則律動が反復して出現した. 画像所見はMRIでは異常を認めずSPECTにて右前側頭部に低吸収域を認めた. 中等度知的障害(WAIS-R47)を有し養護学校卒業後地域作業所に通所していたが, 対人関係が未熟でしばしば易怒興奮状態不機嫌状態となった. 32歳時当院精神科転院となる. PHT200mg, CBZ600mg, CZP1mgにて発作改善せず, CLB10mgを追加投与したところ発作時間の若干の減少を認めたが発作頻度は改善しなかった. また衝動行為が目立った. 転院3ヵ月後CLB20mgに増量, EL2mgを追加投与した. さらに作業所内での人間関係が負担との訴えから通所を一時中止とした. 転院約1年後には発作頻度は週2-3回に減少, 発作時間も約20分間に減少し, 衝動行為が次第に消失, 情緒の安定とQOL向上をみた. 考察:臨床経過上発作頻度時間の改善には薬物療法はじめさまざまな要因が考えられるが, 環境調整によって心理的負担が軽減されたことが臨床症状の改善や情緒安定の一因となった興味深い症例と考え報告した.
ISSN:0375-9172