34. マウス心筋の張力と細胞内Ca2+濃度に対するアシドーシス効果の刺激頻度依存性

目的:心筋の収縮調節には細胞内Ca2+濃度変化や収縮蛋白系のCa2+感受性などが重要な役割を果たしている. 心筋が虚血に陥ると細胞内のpHは低下し, 収縮蛋白系Ca2+感受性の低下によって収縮力が抑制されると考えられている. しかし, 心拍数が異なった時に, 心臓の収縮力や細胞内Ca2+濃度に対するアシドーシスの効果がどのような影響を受けるのかほとんど調べられていない. そこで我々は, 刺激頻度の違いによって, アシドーシス下の心筋収縮力と心筋細胞内Ca2+濃度変化がどのような影響を受けるのか調べた. 方法:麻酔下でマウス(DDY, BW=30g)から心臓摘出後, ランゲンドルフ法にて潅流,...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 2003, Vol.118 (6), p.451-452
Hauptverfasser: 田村欣也, 草刈洋一郎, 平野周太, 大内仁, 本郷賢一, 栗原敏
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:目的:心筋の収縮調節には細胞内Ca2+濃度変化や収縮蛋白系のCa2+感受性などが重要な役割を果たしている. 心筋が虚血に陥ると細胞内のpHは低下し, 収縮蛋白系Ca2+感受性の低下によって収縮力が抑制されると考えられている. しかし, 心拍数が異なった時に, 心臓の収縮力や細胞内Ca2+濃度に対するアシドーシスの効果がどのような影響を受けるのかほとんど調べられていない. そこで我々は, 刺激頻度の違いによって, アシドーシス下の心筋収縮力と心筋細胞内Ca2+濃度変化がどのような影響を受けるのか調べた. 方法:麻酔下でマウス(DDY, BW=30g)から心臓摘出後, ランゲンドルフ法にて潅流, 左室乳頭筋を摘出した. 乳頭筋を, 張力測定用トランスデューサーと固定フックに装着し, 正常タイロード氏(5%CO2ガス混和)溶液中で電気刺激を与えて収縮を誘起した(0.2-2Hz). Ca2+感受性発光蛋白エクオリンを乳頭筋表層細胞に圧注入し, 収縮弛緩中における細胞内Ca2+濃度変化(Ca2+トランジェント)と, 張力を同時に記録した(30℃). 正常液(pH=7.4)は5%CO2ガス, 酸性液(pH=6.8)は15%CO2ガスをタイロード氏液に混和し作成した. 結果:どの刺激頻度においても張力はアシドーシスによって減弱したが, 刺激頻度が増加するにつれて収縮抑制は増強した. 他方Ca2+トランジェントはアシドーシスで増加し, 刺激頻度が低いほどその増加分は大きかった. 酸性液から正常液に戻すと, どの刺激頻度においても張力はコントロールレベルまで回復した. 低頻度刺激(0.2Hz)ではコントロールレベルを超えたが, 高頻度刺激(2Hz)ではコントロールレベルまで回復しなかった. 結論:アシドーシスでは細胞内Ca2+濃度は増加し, 張力は減少するという相反する変化を示し, 収縮蛋白系Ca2+感受性の低下が認められた. アシドーシス時の収縮抑制は低頻度刺激で弱く, 高頻度刺激で強かった. またアシドーシス時の細胞内Ca2+濃度増加は低頻度刺激で大きかった. これらの結果から, アシドーシス時収縮抑制の度合には, 細胞内Ca2+濃度増加量が関与していることが考えられた. これは, 虚血性心疾患などの病態時に心拍数の増加は収縮力の抑制を増悪させることを示唆するものである.
ISSN:0375-9172